米GCC会議でオバマ大統領を不信するアラブを伝えたNYポスト

◆サウジ国王が不参加

 ペルシャ湾岸のアラブ6カ国で構成する湾岸協力会議(GCC)の首脳らが訪米し、13、14の両日、オバマ大統領と会談した。米国の招待を受けての訪米だが、GCCの中心国家であるサウジアラビアのサルマン国王が早々に出席しないことを表明、首脳が参加したのは6カ国中、カタールとクウェートの4カ国だけと、GCC各国のオバマ政権への不信感を図らずも露呈する結果となってしまった。

 米紙ニューヨーク・ポストは、この米GCC会議について社説「米国の同盟国はなぜオバマ氏の約束を信じなくなったのか」で、「アラブの指導者らは、オバマ大統領の『湾岸のパートナーの安全への断固とした決意』という誓いにあまり感銘を受けなかったようだ」と、GCC指導者らの反応が冷めていたことを明らかにした。

 同紙は「当然だろう。これまでに何度も、オバマ氏の断固とした決意、とりわけ中東に関する約束が中途で挫折するのを見てきたのだから」とその原因について指摘している。

 オバマ政権は、中東の安全の確保への約束をしておきながら、「政治的解決しかない」を御旗に掲げた中途半端な関与でアラブ各国の期待を裏切り、情勢の悪化を招いてきたのだから、このGCC指導者らの反応は当然の結果だろう。

 その中でも最たるものはシリアだ。アサド政権に対し反政府勢力への化学兵器の使用は「レッドライン(越えてはならない一線)」と詰め寄っておきながら、化学兵器が使用された証拠が見つかっても、断固とした措置は取らなかった。シリアの化学兵器はその後、米国などによって処分されたが、今月に入ってシリアで化学兵器の痕跡が発見され、製造または隠匿されていた可能性が指摘されている。

 また同紙は「アサド大統領が自国民に対し塩素ガスを頻繁に使用し、何万人もの国民を殺害している証拠が数多く出ている」にもかかわらず、「(オバマ)大統領は、塩素は『歴史的に化学兵器とはされてこなかった』と主張」し静観の姿勢を取っていることを指摘した。

 アラブ諸国の不信を買うにはこれで十分だろう。

 そればかりかオバマ大統領は、リビア、エジプト、イラク、イエメンなどでも積極的な介入をせず、大きな混乱を招いてきた。シリア、イラクにまたがる過激組織「イスラム国」対策でも、対応することを口にはするが、断固とした措置は取っておらず、イスラム国の伸長を許しているのが現状だ。

◆イラン核協議に不満

 現在、GCC各国が最も懸念を抱き、オバマ政権への不信を強める主要な原因となっているのはイラン核協議だ。

 GCC指導者らはオバマ政権の招きで訪米した。GCCがそろって訪米すること自体異例の上に、大統領山荘キャンプデービッドに招待するほどの歓待ぶりだ。

 オバマ大統領としては、来月末に最終合意が交わされる予定のイラン核合意への理解をGCC各国に求めるためのものだったが、サルマン国王の欠席で水を差された格好だ。

 サウジはGCCの中心的国家であるばかりか、イスラム教スンニ派の盟主、さらにはメッカ、メディナを擁するイスラム教全体の中心的位置を占め、そのうえ世界最大級の産油国として米経済ばかりか世界経済にも非常に大きな影響力を持つ。さらに首脳が参加したのは2カ国だけ。GCC各国がオバマ政権に不信感を抱いていることは明らかだ。

 オバマ氏は2010年の一般教書で、イランが核開発を進めれば、「深刻な事態」に直面すると、核開発の阻止を約束した。だが、4月に交わされた枠組み合意は、イランの遠心分離器の保有を認めており、将来の核兵器開発への道を開くものだ。そのうえ、「イスラム国」対策でもイランと協力するなど、反アラブととられかねない対応も取っている。イランの核武装は、湾岸アラブ諸国をはじめとする中東諸国の核武装にもつながりかねない。

◆ちぐはぐな中東政策

 英紙サンデー・タイムズは17日、米政府高官からの情報として「サウジアラビアはパキスタンから『市販の』核爆弾を購入する『戦略的決断』を下した。中東の武装競争を招く危険がある」と報じた。

 中東での影響力低下は米国の国益にとっては大きなマイナスだが、オバマ政権からは一貫した中東政策は見えてこない。

(外報部・本田隆文)