頑なな朴政権の対日姿勢

 韓国の感情的で執拗(しつよう)な安倍政府攻撃、日本攻撃によって、戦後これ以上ないと言うほど悪化した日韓関係ばかりに目が行くが、そうしている間に北朝鮮は着々と核ミサイル開発を進めていることが明らかになった。

 北朝鮮の朝鮮中央通信が9日、弾道ミサイル水中発射実験に成功したと報じたのだ。米国が指摘していた潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)開発を北朝鮮自ら認めた格好で、韓国はじめ日米などに衝撃が走った。

 こうした北朝鮮の核開発、ミサイル実験をみれば、韓半島と東アジアに軍事的危機が現に存在していることは容易に理解できる。そのために韓国は防衛体制を整えなければならないが、自国だけで対応できるものではない。米韓同盟、その背後にある日米安保体制が韓半島の安全保障に絶対欠かせない協力体制だ。

 しかし、朴槿恵(パククネ)政府は北ミサイルに対応する終末高高度防衛(THAAD)ミサイルの在韓米軍配備に抵抗し、有事の際、韓国防衛を行う米軍を支援できるようにした日本の集団的自衛権行使容認にも難癖をつけ、まるで自分の首を絞めるかのような矛盾した行動を繰り返している。

 そうした執拗な韓国の日本攻撃と、それがもたらす東アジア防衛協力体制の不安定化について、米国では「韓国疲れ」という言葉まで出ており、韓国の頑(かたく)なな対日態度をたしなめる雰囲気が濃厚だ。

 安倍首相の訪米が成功裏に終わり、日米蜜月関係が誇示されたこともあって、韓国はようやく自らの「外交的孤立」を心配し始めた。頑固な朴大統領に業を煮やした韓国メディアでは、「歴史問題と経済・安保を切り離したツートラック対応」を求める論調がこのところ増えてきてはいるが、韓国政府は「元々、そういう対応をしている」として、現状を変える素振(そぶ)りは見せていない。

 だが、この状況は韓国の保守層に深刻な危機感を植え付けている。「月刊朝鮮」元編集長で韓国の保守言論界を代表する趙甲済(チョカプジェ)氏が主宰する「趙甲済ドットコム」で、金泌材(キムジェピル)記者が「『日米連合司令部』創設の可能性」(4月29日掲載)を書いている。

 現在、米韓連合司令部が韓半島でにらみを利かせているが、それを日本に持っていくのではないか、という非常に強い疑心暗鬼の分析である。

 その理由について金記者は、「金大中(キムデジュン)、盧武鉉(ノムヒョン)、李明博(イミョンバク)、朴槿恵政権を経て、米国と日本の安保関係者は韓国の『親中朝・反日米』が固定化したと見ているようだ」と述べ、今後、中国の覇権主義と軍拡、北朝鮮の核小型化に対処するために、「米韓連合司令部を日本に持っていく戦略をとるだろう」と予測する。

 それを機に日本は、「日米韓三角同盟体制から韓国の離脱を既定事実化」して、さらに「日米連合司令部を米国に提案するだろう」との見方をしているのだ。

 米軍の再編成完了時には、「駐日米軍司令部が韓半島有事の際、作戦を指揮」し、「横田飛行場にミサイル防衛のための(日米)共同作戦センターを設置」し、「米本土の陸軍第1軍団司令部を座間基地に移転」することで、日米が合意しているから、韓国が疑心に捕らわれるのも無理はない。

 一方、中央日報(4月29日付)でも、「日米が米韓連合司令部のような常設機関を作る」と報じた。日米ガイドラインで合意され、今後自衛隊法など安保法制で整理していく内容だが、韓国側が日本との「疎通」を確保しておかないことには、それこそ“蚊帳の外”に置かれることにもなりかねない。

 最近の韓国メディアの論調が「ツートラック」に変わってきている背景に、こうした現状がある。しかし、これまで事あるごとに「反日」を煽(あお)ってきたメディアが日米韓安保協力に舵(かじ)を切ったところで、反日に染まった読者=国民を納得させられるかは不明であり、この事態はかなり深刻である。

 編集委員 岩崎 哲