介護報酬引き下げに超高齢化社会の深刻な現実に関心を寄せる各誌

◆老人漂流と嘆く毎日

 4月からの介護報酬引き下げを受けて、週刊誌各誌は判で押したように「高齢者介護」問題を取り上げている。「介護現場での労働力空洞化」「介護崩壊に拍車」「外国人スタッフ頼み」などの見出しが目に突き刺さる。

 「中でも大打撃を被るのが特別養護老人ホーム(特養)だ」というのはサンデー毎日(3月1日号)だ。「報酬引き下げが介護崩壊に拍車をかけかねない」と危機感をあらわにしている。

 介護報酬が引き下げられるのは一見、いいことのように見られるが、それによって経営が圧迫される事業者側は人員の整理や過重労働で対応せざるを得ない。それが離職や常勤から非常勤への転換につながり、職員不足をもたらす。結果的に介護サービスの低下、劣化につながるわけだ。

 国は介護職員の待遇改善にも加算をつけて、職員給与アップに反映させるとしているが、実際に給与が上がるのは「介護職員のみ」だ。「看護師や調理師、ケアマネージャー(ケアマネ)、送迎の人などは加算の対象にならない」と同誌は書く。しかも、「月給は、全職種の平均より約10万円下回る約22万円にとどまる(13年)」という待遇で、「こんな状況を放置しておいていいのか」の声は切実である。

 介護現場の厳しさから、今でさえ「過去5年間で介護・看護のために離職した人は48万7000人だ」になるといい、施設不足、職員不足は今後ますます深刻になる。

 それに加えて、将来に大きな課題が待ち受けている。「10年後の2025年には、団塊の世代が75歳の仲間入りをする」ことである。同誌は「大都市部では、行き場がなくなり、『老人漂流社会』がまさに現実になって」しまうと予測する。

◆文春ルポに5Kの声

 週刊文春(2月26日号)は「高齢者施設『修羅場』ルポ」を載せている。ある都内の施設では「入居者の八割以上は認知症を発症している」という。職員との「正確なコミュニケーションをとることができない」状態だ。

 職員が過重労働で「朦朧(もうろう)として仕事をしている」のに加え、人員不足で目の届かないところや、目を離したすきに、転んだり、倒れてしまい、後から骨折していたと分かる事例などを紹介しているが、各地の施設で普通に起こっていることだ。

 また、同誌は介護の現場が厳しいことから、「介護専門学校がドンドン潰れている」と、ある福祉法人の話を紹介した。現場が“三Kの象徴”となっている。「“きつい・汚い・臭い・給料が安い”……あれ、四Kですね。“悲しい”を入れたら五Kか」(千葉県の有料老人ホーム職員)という“自虐”は痛ましい限りだ。

 同誌は、「高齢者やその家族の生活を地道に支える人々の労働環境の改善こそが望まれる。ところが実際は状況を悪化させる『介護報酬引き下げ』という決定がなされたわけだ」と、政府の施策を批判する。

 このままでは「多くの事業者が介護を離れる事で、実際にケアを必要とする方たちの受け皿が不足する事。“介護難民大量発生”という非常事態は、絵空事ではないと感じています」と「上場企業で大手のチャーム・ケア・コーポレーションの下村隆彦代表取締役」の言葉を紹介するが、国は何を見て、何を改善した気になっているのだろうか。

◆外国人に朝日は期待

 介護職員不足を見越して、「働き手の確保」という観点から外国人介護要員に目を向けたのが週刊朝日(2月27日号)だ。安倍政権が打ち出した「外国人技能実習制度」を介護職まで枠を広げて、15年度中にも始める方針だという。

 だが、そこで問題となるのは「やはり日本語だ」と同誌は指摘する。正確な記録や指示の伝達ができなければ、「事故に結びつきかねない」からだ。わずか1年で「N3」という日本語能力試験をクリアしなければならない。N3とは「日常的に使われる日本語を理解する」レベルだ。これで介護現場で通用するのか、疑問もあるが。

 介護を受ける側も外国人への偏見や抵抗があるものの、「将来的には世界中で介護職員の奪い合いが起きるとも言われている」として、「日本は外国人を『使い捨て』にせずに、定着してもらえる制度を考えるべきではないか」と強調している。

 3誌各様の「介護」記事は深刻な課題を想起させた。4月以降の継続記事を待ちたい。

(岩崎 哲)