景国内景気、カギを握る個人消費回復


 3四半期ぶりにプラス成長となったが、景気回復の勢いには力強さが見られない――。内閣府発表の2014年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値で示された経済状況を一言で表現すれば、こうなるだろう。

 昨年4月の消費税増税に伴う駆け込み需要の反動減の影響は和らぎつつあるが、相変わらず景気の牽引(けんいん)役が見当たらない。17年4月の再増税までに「経済の好循環」をいかに実現するか。政府による15年度予算の早期成立とともに、日銀の政策運営でも柔軟さが必要である。

 消費増税で実質所得減少

 14年10~12月期の実質GDPは前期比0・6%増、年率換算で2・2%増だった。3四半期ぶりのプラス成長となったものの、事前の予想は3%台後半が多かっただけに、それと比べると低い伸び率だった。何よりもGDPの6割弱を占める個人消費の回復が遅れている。

 消費税増税直後の14年4~6月期に前期比5・1%減となった個人消費は、その後も7~9月期、10~12月期とも同0・3%増にとどまり、ほぼ横ばい状態。前年同期比では依然としてマイナス圏なのである。

 これは消費税増税によって家計の実質所得が減っているためだ。そこに円安に伴う輸入物価の上昇が追い打ちをかけ、消費を抑制しているのである。

 設備投資も3四半期ぶりにプラスになったが、前期比0・1%増と個人消費以上に伸び率が低かった。日銀短観などによる設備投資計画では良い数字が出るものの、実際の投資には繋(つな)がっていないのである。企業収益は好調でも、消費の弱さのために積極的になりきれないのであろう。

 昨年11月に安倍晋三首相が下した消費税再増税(15年10月実施予定)の延期判断は、本紙がかねて主張してきたように妥当だったということである。予定通り実施すれば景気腰折れでは済まなかったであろう。「アベノミクス崩壊」である。

 問題は今後である。カギを握るのは、春闘での賃上げの動向と原油安の影響である。

 賃上げに関しては、帝国データバンクの調査で15年度に正社員の賃金改善を見込む企業が48・3%に上るなど、企業が前向きな姿勢を強めていることがうかがえる。

 連合は今年の春闘で前年を上回る2%以上のベースアップを要求する方針を掲げているが、物価の上昇以上の賃上げが実現し雇用者報酬が実質プラスとなるか。またそれがどこまで広がるか。

 柔軟な金融政策運営を

 この点で、日銀の金融政策運営には柔軟さが欠かせない。原油安などの影響で、2年間で2%程度の物価上昇という日銀の目標達成は難しい状況だ。ただ目標に拘泥すれば、雇用者報酬や家計の実質所得のプラス化を妨げ、個人消費ひいては景気拡大にマイナスとなる。

 原油安は家計にとっては電気・ガス料金の引き下げやガソリンなど燃料価格の低下を通じて負担が減るため、消費拡大には援軍である。企業にも全体として収益にプラスのようである。これを賃上げや設備投資増に積極的に生かしてほしい。

(2月18日付社説)