第三者委報告が指摘する慰安婦虚偽報道のツケ払いに追われる朝日

◆報告書の要約を6ページ

 朝日新聞社による慰安婦報道を検証する同社の第三者委員会(中込秀樹委員長ら7人)が22日に記者会見し、報告書を公表した。A4判110ページに上る報告書全文はネット上で公開、記者会見では同40ページの報告書要約が公表されて質疑応答となった。

 朝日新聞は翌23日付朝刊で要約を全6ページにわたり掲載したほか、先に取り消した16本の吉田清治氏(故人)の証言を取り上げた慰安婦記事に加え、新たに2本の記事取り消しと、吉田証言関連以外で問題を指摘されてきた慰安婦記事の訂正とおわび、説明の全1ページ特集を掲載した。

 今回の本欄では、この報告書についてウオッチしたい。報告書は当初、委員会メンバーが北岡伸一委員(国際大学学長)以外は朝日寄りの人選だとして「御用委員会」の批判もあったが、慰安婦報道の問題を洗う中で、これまでの朝日報道の欠陥と偏りの傾向、実態などを相当に明らかにしたと見ていい。

 慰安婦問題において「狭義の強制性」を報じる上でほとんど唯一で、重要な根拠となった吉田証言が疑問視されたのは1992年。現代史家の秦郁彦氏が済州島での現地調査に基づく調査結果を産経新聞などで発表したからである。これ以降、朝日は吉田証言の真偽を確かめるのではなく、取り扱いを減らしていくという対応を取った。報告書は、この消極的対応に対して「新聞というメディアに対する信頼を裏切るもので、ジャーナリズムのあり方として非難されるべきだ」と糾弾した。

◆欺瞞を次々鋭く断罪

 また、97年3月の特集記事は、慰安婦報道を検証・総括するために、済州島まで調査したものの吉田証言の裏付けを得られなかった。にもかかわらず、特集は吉田証言について「真偽は確認できない」とする表現にとどめ、訂正や取り消し、謝罪を行わなかった。

 報告書はこれについても「(吉田証言に依拠して)日本軍などが物理的な強制力により直接強制連行をしたといういわゆる『狭義の強制性』があったことを前提に作成された記事について、訂正又は取り消しをすべきであったし、必要な謝罪もされるべきであった」とし、それらをしなかったことを「致命的な誤り」だと厳しく断じた。

 そして、報告書はこの特集が唐突に強調し始めた「広義の強制性」にも言及。「朝日新聞は当初から一貫していわゆる『広義の強制性』を問題としてきたとはいえない」とした上で「『狭義の強制性』を大々的に、かつ率先して報道してきたのは、朝日新聞である」と指摘した。さらに「(特集が)『狭義の強制性』を大々的に報じてきたことについて認めることなく、『強制性』について『狭義の強制性』に限定する考え方を他人事のように批判し、河野談話に依拠して『広義の強制性』の存在を強調する論調は、議論のすりかえである」と、その欺瞞(ぎまん)を鋭く断罪している。

 報告書は、取り消した16本の記事に含まれない「慰安婦以外の者の強制連行について吉田氏が述べた記事についても検討し、適切な処置」を求めた。その一つが「朝鮮人こうして連行 樺太裁判で体験を証言」(82年10月1日付)である。22日の記者会見で、小紙がこの記事の取り扱いを問いただしたが、朝日(23日付訂正・おわび一括特集)は報告書の求めに応じてデータベース上の記事に「証言に信用性はなく、虚偽だと考えられる」などの注釈を付け、記事を事実上、無効化することを明らかにしたのである。

◆改めて訂正とおわび

 吉田証言関係以外の慰安婦報道では、記事の捏造(ねつぞう)批判が出ている植村隆・元記者の91年の2本の記事について報告書は「安易かつ不用意な記載であり、読者の誤解を招く」「事案の全体像を正確に伝えなかった可能性はある」と批判。これについても、朝日(同)は韓国人の元慰安婦の証言を初めて取り上げた記事については「挺身(ていしん)隊の名で戦場に連行された事実はない」と訂正し、おわびした。

 また宮沢喜一首相の訪韓直前92年1月11日付の1面トップ記事「慰安所 軍関与示す資料」については「首相訪韓の時期を意識して慰安婦問題が政治課題となるよう企図して記事としたことは明らか」と批判。記事に併載された「『従軍慰安婦』の用語説明メモが不正確である点は、読者の誤解を招くもの」「まとめ方として正確性を欠く」などと断じた。

 メモにある「8万~20万人」とした朝鮮人慰安婦数について朝日(同)は「はっきりわかっていない」と断り書きし、「強制連行した」などの表現も取り消すなど、報告書の指摘する虚偽報道のツケ支払いに追われているのである。

(堀本和博)