朝日新聞のインタビュー捏造、朝日出版の窃盗で文春が追及の連打

◆盗んでいた経営機密

 「水に落ちた犬は叩け」―。朝日新聞をめぐる状況は、まさにこれだ。ライバル紙はもちろんだが、追及の矛先がめっぽう鋭いのは週刊誌である。中でも群を抜いているのが週刊文春で、9月25日号にスクープを載せた。朝日新聞が「ライバル社の『極秘資料』を盗んでいた」というのだから、穏やかではない。

 同誌によると、朝日新聞社が100%出資する子会社の朝日新聞出版で、ライバル社の極秘資料が不正に入手され利用されていたのに、朝日新聞はそれを把握しながら、中途半端な処理で済ませていた、というのだ。

 その極秘資料とは、分冊百科の発行で世界的出版社のデアゴスティーニ・ジャパン(以下デアゴ社))の「利益の根幹となる機密情報」である。デアゴ社から朝日出版に中途入社した「K氏」が持ち込んだ。

 その前に、まず朝日出版がデアゴ社に「謝罪した」件を説明しておく。極秘資料のことではない。K氏はデアゴ社に在籍していた時にお蔵入りとなった企画を朝日出版で制作する過程で、デアゴ社の「マーケティング調査資料」を流用していた。

 これは朝日新聞のコンプライアンス委員会で問題となり、朝日はデアゴ社に謝罪して、「一件落着」したことになっている。

 だが、文春が取材を進めて行くと、調査資料どころではない「『極秘情報』までもが盗み出されていたことが判明した」という。それが「逓減表」と「売上表」だ。分冊百科は創刊号から号が進むにしたがって売り上げが下がっていく。また企画ごとにその傾向が違い、発行部数を調節して、売れ残りの最少化を図る。これは長年のデータの蓄積で成立する資料で、企業経営にかかわるもの。朝日出版にとっては「喉から手が出るほど欲しいデータ」だ。

 朝日新聞は、この極秘資料を不正に入手していることを把握しながら、資料がごく一部の社員だけに限られていて、「まだ外部には露見していなかったため、告発を受けたものの詳しくは調査しなかった」(コンプラ委関係者)という。バレてなければいいとして、「不問に付された」わけだ。

 文春はこの「逓減表」と「売上表」の資料をデアゴ社に提示して、朝日出版が所持していること、朝日新聞コンプラ委で「不問に付された」ことを伝えた。

◆収まらない朝日騒動

 デアゴ社の大谷秀之社長は、「それは驚きです。(略)これが漏れているのはまずい。なぜこれらの資料が朝日に流出したのか。場合によっては窃盗ですよ!」と衝撃を受けていたようだ。

 朝日は「マーケティング資料」の件で、デアゴ社に謝罪している。だが、この件については何も伝えず隠し通していたのだ。刑事告発するかどうかはデアゴ社の判断に委ねられている。

 文春のこの記事で改めて朝日をめぐる騒動が大きくなった。同誌発売翌日、新聞各紙は記事を引用して報じており、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)でもかまびすしくこの話題で持ちきりだ。

 こうなると「過去の行状」も暴かれてくる。朝日が任天堂社長インタビューを捏造していたことだ。「一昨年の6月」に岩田聡任天堂社長が受けてもいないインタビューが朝日新聞に掲載された。同誌の取材によると、朝日の記者は任天堂ホームページの動画から無断借用し、自社原稿のように偽装して掲載したという。

 同誌が確認の取材を入れると、朝日新聞は隠しようがないと観念したのか、今になってそそくさと「お詫び記事」を翌朝刊に出した。文春が発売される前に「自首」した格好だ。姑息な対応である。文春は朝刊が出る前の深夜のうちにウェブサイトに記事を公開して伝え、これもSNSで騒ぎとなっている。

◆池上氏論評で自戒か

 朝日新聞のコラム掲載が一時、差し止められた池上彰氏が文春で、「罪なき者、石を投げよ」と書いている。社を批判する記事が止められたのは朝日ばかりではない。社の意に沿わない記事が封殺されることは、多かれ少なかれ、どの社でもあることだ。本当に朝日を批判できる者がいるのか、という厳しい意見だ。

 朝日追及で一歩抜きんでている週刊文春。自ら池上氏のコラムを載せ、戒めとするのか。

(岩崎 哲)