基地反対運動に偏りすぎている沖縄タイムス、琉球新報の選挙報道
◆賛成する辺野古地元
かつて三里塚闘争というのがあった。三里塚とは成田国際空港の建設予定地となった地元の名称だ。地元の反対運動に極左過激派が加わり、流血事件が絶えなかった。成田闘争とも呼ばれたが、成田市は市も議会も空港建設に賛成していた。それで反対闘争の地元と言えば、三里塚を指し、メディアもそう書いた。
この伝に従えば、米軍普天間飛行場の移設地となる名護市辺野古の地元は辺野古であって名護市とはならない。ところが、沖縄では米軍基地に反対する運動を「オール沖縄」と称しても、地元の辺野古を冠して「辺野古闘争」とは誰も呼ばない。なぜかと言えば、辺野古の地元住民が移設に条件付きで賛成しているからだ。成田とは真逆である。
これは重い事実だ。辺野古が名護市に属していると言っても太平洋側の東海岸に位置し、東シナ海側の西海岸の中心市街地とは地理的に隔たっている。砂浜が少なく、観光地にも恵まれていない。それで町村合併(1970年)で名護市になる以前、久志村という独自自治体だった時代に村民挙げて米軍基地の誘致運動を行った。それが辺野古の海兵隊キャンプ・シュワブだ。今回の辺野古移設も環境整備などを条件に賛成している。
だが、それでは都合の悪い反米軍基地の沖縄の新聞は、地元を名護市へと“拡大”し、先に行われた名護市議選では辺野古移設に反対する稲嶺進市長派が過半数を維持したことをもって「辺野古反対が勝利」(琉球新報8日付)と書き立てた。三里塚闘争でメディアが「成田賛成」と書き、地元農民の反対を抹殺すれば、それこそ猛反発を招いただろう。それが辺野古では当然のように抹殺されている。
◆事実は反対派議席減
沖縄では7日に統一地方選挙が行われた。選挙結果は本紙17日付「沖縄のページ」に詳しい。一言すれば「革新系議席減、保守系は増」で、名護市も市長派が過半数を維持したものの1議席減で、保守が1議席伸ばした。那覇市に次ぐ第2の都市で嘉手納基地のある沖縄市議選も保守が制し、尖閣諸島を所管し自衛隊誘致問題を抱える石垣市議選も保守が圧勝した。
これに対して8日付の琉球新報(以下、新報)と沖縄タイムス(以下、タイムス)は名護市議選だけを焦点化し、「基地阻止 決意新た 名護、民意揺るがず」(新報)、「基地強行 反発の風」(タイムス)と、反基地の大見出しを躍らせた。
だが、移設先の地元、辺野古では普天間代替施設推進協議会の前会長で移設容認の宮城安秀氏が2選を果たし、改めて辺野古住民の移設賛成の民意を示した。新報にはわずか7行だが、「辺野古出身で新基地を容認する宮城安秀さん(59)は8日午前0時過ぎ、約100人の支持者の前で『この大きな期待をしっかり胸に受け止め、一生懸命頑張りたい』と話した」とある。
新報はこの地元の大きな期待の声(すなわち移設賛成)を見出しに取らず、地元外の「基地阻止」の特大見出しで掻(か)き消してしまった。おまけに移設反対派のギタリストの初当選を「辺野の海 命の源」とまるで地元候補者のように扱った。
さすがにタイムスは無視できなかったとみえ、当選を祝う宮城氏の写真入りで「辺野古の将来に全力 地元の議席守る」との4段見出しで、こう記している。
「移設先に近い辺野古、豊原、久志の『久辺3区』は8月28日、移設工事に伴い地域住民の利益を常に考慮することなどを要請。今後首相官邸にも申し入れる構えで、『条件付きで賛成であり、要請は当然やるべきこと』と述べ、政府に実現を求める姿勢を示した」
こういう話はタイムスでも滅多にお目にかからない。新報は黙殺だ。名護市議選を受け、取り上げざるを得なくなったようだが、肝心の移設賛成の文字は見出しにない。
◆計算あわない動員数
地元住民と関わりのない反対運動はもっぱら県内各地からのバス動員だ。20日に開いた辺野古での反対集会にはバス35台を調達した(新報19日付)。1台の定員60人としても満席で2100人。それが主催者発表で5500人とある。20日付の新報もタイムスもこの数字を躍らせている。沖縄では朝日ばりの虚報がまかり通っているようだ。
(増 記代司)