中国「外資たたき」は習主席の人気取りと「プライムニュース」が分析

◆独禁法で摘発相次ぐ

 中国国家発展改革委員会(発改委)が日本の自動車部品メーカー12社に対し、独占禁止法に違反したと認定し、うち10社に対して計12億3540万元(約200億円)の罰金を科したことが波紋を広げている。中国が独禁法で罰金を科した額としては過去最高額とされるからだ。

 これ以外にも、外資系企業に対する中国当局の独禁法による摘発、調査はここ1年半で相次いでいる。

 2013年1月には韓国のサムスン電子など液晶パネルメーカー6社に対して、約50億円の制裁金が科せられた。同年8月には仏ダノンなど食品6社が不正に価格をつり上げたとして約98億円の罰金、今年に入っても、ニコンや米マイクロソフト、独ダイムラーなど、多くの外資系企業が独禁法の疑いで摘発や調査を受けている。

 中国で独禁法が施行されたのは2008年で、まだ6年しかたっていない。一連の動きは、中国による「外資たたき」とも言われ、欧米も注視している。

 欧州連合(EU)の駐中国商工会議所は、中国が外資系企業を強権的に調査していることについて、「十分な聞き取りもなく、脅すような手段」を用いていると非難する異例の声明を出した。

◆基盤固めで外資狙う

 25日に放送されたBSフジの「プライムニュース」は「独禁法違反罰金200億 中国が外資たたくワケ “反日”の深層を読む」と題し、外資系企業への強硬姿勢が相次ぐ背景を中国専門家を呼んで討論した。

 一部では、発改委が実績をアピールするために躍起になっているなどとする報道がある。しかし、同番組にゲスト出演した神田外語大の興梠(こうろぎ)一郎教授はまったく違った意見を披露した。

 興梠教授は「ここにきて急に始まった習近平の政治キャンペーン」とし、習近平国家主席が政権基盤固めのために「外資たたき」をしていると分析した。

 興梠教授は「(習国家主席は)権力闘争をしていて、自分の政権基盤を固めることに精一杯」と指摘。そのためには国民の人気を集める必要があり、「『俺は外資もやるんだぞ』とすると、非常に国内でうける。経済的にも国内の企業を守れ、一石二鳥」になると説明する。

 一方、東京大学大学院の平野聡准教授は「これからは外国企業も中国の管理に従うべきだというポーズを見せ始めている」との見方を示した。さらに「外資に圧力をかければ、国民の支持も得られると習近平は考えているのではないか」と解説した。

 また興梠教授は、中国が最近盛んに声を大にしている「汚職摘発」「腐敗撲滅」についても、特定の政治勢力だけを狙って選択的にしていると指摘。外資系企業を狙っているのも同じ構図で、「自分たちが欲しい技術を持っているところをターゲットにしている」と問題視し、こうした中国指導部の考えについて「一番危ない」と喝破した。

 中国は国有企業などによる独占がはびこっており、特定の企業だけ取り締まる一連の摘発は、明らかに政治的意図を感じる。

 自身の政権基盤を固めるために外資系企業を狙い撃ちにしているとしたら、確かに危険な考えだ。

◆中韓の接近に警鐘も

 ただ、こうした「チャイナリスク」は、かねてから語られてきたことでもある。中国が共産党の一党独裁体制である以上、共産党の意向で外資系企業をどのようにもできることを承知で、企業も進出しているはずだ。

 中国に付き合いきれないのなら、東南アジアやほかの国に行けばいい。実際に中国を離れる企業は続出している。

 「中国で活動するなら、政治闘争とまったく関係ない企業でも巻き込まれる」。同番組は、そうしたリスクを改めて教えてくれたことで評価できよう。

 番組ではほかに、中韓の接近についても警鐘を鳴らしていた。

 平野准教授は「韓国が日米と離れて中国と一心同体になれば、日本の安保にも大きな影響を与えることができる」と中国が考え、韓国の取り込みを図っていることを強調した。

 過度な中国傾斜の危険性は韓国政府も十分理解しているはずだが、韓国が中国に取り込まれてしまうことは多くの人が危惧するところだろう。

(岩城喜之)