GDP減少で来秋の消費再増税を懸念する東京、楽観的な産経、日経
◆景気壊す大砲と警鐘
4~6月期の国内総生産(GDP)は、予想されていたとはいえ、ずしりと重い数字である。前期比、実質年率で6・8%減は東日本大震災が起きた11年1~3月期(6・9%減)とほぼ同じ。消費税増税のインパクトの大きさを如実に知らしめる数字である。
この減少率は、前回の消費税増税直後の1997年4~6月の3・5%減を大きく上回る。97年の消費税増税がその後のデフレ経済の契機となり、財政赤字の累増を招くことになったことを思うと、今後の日本経済の行方がどうしても気になってしまう。来年10月に10%への再増税の予定では尚更である。
新聞は各紙が社説で取り上げた。見出しを列挙すると、14日付が以下の5紙。朝日「日本の経済/『民間主導』へ正念場だ」、読売「GDP大幅減/消費回復の後押しが必要だ」、毎日「増税後の景気/消費回復がカギになる」、産経(主張)「GDP大幅減/消費につながる賃上げを」、日経「『反動減』後の経済の復元力が試される」。16日付は本紙「GDP大幅減/来秋の消費再増税は慎重に」、17日付が東京「増税が壊す?アベノミクス」である。
掲載の遅かった東京は、毎日曜の大社説「週のはじめに考える」の中で、結果的に、あるいは意図してか、各紙で最も力の入った扱いになった。
東京が注目したのは、来年10月予定の消費税増税がどうなるか、文章をそのまま引用するなら「このまま消費税を10%に引き上げてしまって本当に大丈夫なのか」である。
同紙は、安倍政権は「三本の矢」で成長を目指しているが、消費税増税は一発で景気を腰折れさせる破壊力を持つ、弓矢どころでない、まさに大砲であると指摘。
これまで大胆な金融緩和と財政支出で景気を下支えし、これから規制改革を起爆剤にいよいよ中長期の成長を目指そうという地点に漕ぎ着けたが、「ここで砲弾を浴びれば、いままでの苦労が水の泡になりかねません」と懸念を示し、「景気回復は政権の最重要課題」という原点に戻る必要があると唱える。同感である。
再増税については、景気が本当に回復してから判断しても遅くない、との指摘である。
◆予断許さぬ経済状況
日本の企業は赤字会社が多く、法人税を納めているのは3割にすぎない。だから、景気が良くなり、そういう会社も法人税を納めるようになれば、法人税はもちろん、所得税や消費税などの税収も増える、というわけである。
同紙は、緒に就いた規制改革を進めて、企業が元気になる環境づくりに全力を挙げることを強調するが、これまた同感である。
東京のように、来秋の消費税増税の是非に踏み込んだのは、列挙した見出しの通り、本紙である。
賃金の上昇が物価上昇に追いつかず実質所得は目減りを続け、また輸出環境も地政学的リスクもあって不透明であり、原発停止によって電気料金が上昇するなど、日本経済を取り巻く状況は予断を許さない。増税の判断は「慎重に」ということである。
他紙は、日本経済に「気がかりな点がないわけではない」(朝日)、「景気失速への警戒を強める必要がある」(読売)などと指摘し、そのために、昨年12月に策定された経済対策、特に公共事業の円滑な執行や、成長戦略の着実な実行、企業に対しては賃上げや積極的な投資を強調するにとどまっている。今回の増税が経済に少なくない悪影響を与えているだけに、来秋の再増税是非の判断に言及がないのは、いかにも物足りない。
◆好循環実現できるか
産経は「消費税率8%の実施がいかに重い国民負担だったかを示す厳しい数字だ」と指摘しながらも、安定した社会保障財源の確保と財政再建のために「消費税アップは欠かせない」と言い切る。文中に、再増税実施の時期を特定する言葉はないが、来秋の再増税は当然ということのようである。
同紙は「増税を乗り越えて経済の好循環を実現するには所得の改善が不可欠だ」との文章で社説を締めくくったが、問題は来秋までに好循環が実現、定着するかである。
日経は「予定通り来年10月に10%に消費税率をあげる決断ができる環境づくりをきちんと進めるべきだ」としたが、産経と同様、少し楽観的過ぎまいか。
(床井明男)