辺野古海底ボーリングに海自が「武力で恫喝」と妄想する沖縄地元紙

◆海上抗議は小舟僅か

 妄想。辞書には「非合理的かつ訂正不能な思いこみのこと」とある。根拠が薄弱であるにもかかわらず、確信が異常に強固である、とも。妄想を持った本人は、その考えが妄想であるとは認識しないのだという。沖縄の地元紙、琉球新報(以下、新報)の辺野古報道はまさにこれである。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に向けて、沖縄防衛局が海底ボーリング調査を始めた。すると、新報は7日付1面トップで「辺野古に海自艦 掘削支援で検討 国、抗議行動を威圧」と、けばけばしく報じた。

 ボーリング調査で住民側と業者や海上保安庁が海上で衝突した場合、「政府の解釈で『警備行動』として海自が住民らを直接排除する可能性もありそうだ」と言うのだ。「防衛関係者」の話としている。

 これを受けて翌8日付社説は「武力で県民恫喝(どうかつ)する野蛮」とのタイトルで、「中世の専制君主国と見まがうありようだ。何という野蛮な政府か」と書き出し、「『琉球処分』の際、明治政府は官吏と軍人を差し向け、併合に反対する市民を逮捕、拷問した。住民に軍を対峙させようとする今の政府の姿はそれと二重写しとなる」と結んでいる。

 時代錯誤も甚だしい。どう読んでもあり得ない話で、これを妄想と言わずに何と言えようか。住民を威圧するもしないも、14日の反対派の海上抗議行動には小型船4隻と10隻ばかりのカヌーが接近した程度で、海保は素早く包囲し、遠ざけている(産経15日付)。

 もう一つの地元紙、沖縄タイムスは「工事抗議に最多結集」と報じるが(12日付)、その最多とは「一時150人を越え」たにすぎない。本土からの「家族連れ」もおり、左翼労組による「観光ツアー」も含まれている。

◆知事選前に虚報攻勢

 そもそも60年安保や成田闘争でも自衛隊が出動することはなかった。警察の仕事だからだ。海自に警備行動が発令されたのは1999年の能登半島沖での北朝鮮工作船事件、2004年の先島諸島での中国原潜領海侵犯事件、09年のソマリア沖での海賊対策の3回のみで、いずれも海自でないと対応できないケースである。

 本当の防衛関係者ならこうしたことは先刻承知だ。新報の「防衛関係者」はよほどの無知か、それとも海自を貶(おとし)めようとしているのか、いずれにしても慰安婦をめぐる朝日の「吉田証言」と同様の虚報・捏造(ねつぞう)の類としか考えられない。そうした虚報を社説で“既成事実化”していく。地元紙のいつものやり口である。

 沖縄では9月に統一地方選(約30議会)、11月に知事選が行われる。革新陣営は辺野古問題を争点化し、県政を奪還しようと目論んでいる。そんなときに地元紙は決まって、こういう手法を使う。

 今年2月の石垣市長選がそうだった。新報は告示日の同23日付1面トップで「陸自、石垣に2候補地 防衛省が来月決定」と報じた。2候補地は子供らの憩いの場となっている八島新港地区と宮良サッカーパークとしたが、候補地は3月どころか、いまだに決定していない。明らかに陸自誘致に前向きな保守現職のイメージを落とし、反対する革新候補を利する虚報である。

 それで防衛省は新報と新聞協会に事実無根と抗議した。協会の新聞倫理綱領は「正確・公正で責任ある言論」を掲げており、これに新報が明らかに違反しているとの判断からだ。放置すれば、選挙の中立性も危うくする。

◆労組・共産党の合作

 ところが、新報と新聞労連は「報道への弾圧」と強弁し、抗議行動を続けてきた。その音頭を取ったのは新聞労連の米倉外昭副委員長(7月に退任)で、新報の労組委員長だった人物である。

 米倉氏は東北大学の学生時代に共産党系の「東北大学新聞」編集長として学生運動に血道を上げ、新報入社後、労組幹部にのし上がった職業的活動家として知られる。3月20日には国会に共産党の志位和夫委員長を訪ね、「(弾圧に対して)市民運動と結合し、国会でも協力してほしい」と訴えている(『しんぶん赤旗』同21日付)。

 こういう左翼活動家が沖縄の不可解な言論空間を作り上げてきた。知事選を控えて、次にどんな妄想が飛び出すか、見ものである。

(増 記代司)