日朝協議、粘り強く「拉致」再調査求めよ


 日本と北朝鮮の外務省局長級による政府間の公式協議が北京で行われた。

 安倍晋三首相は日本人拉致問題を「必ず安倍内閣で解決する」と繰り返し強調してきた。粘り強く拉致問題の再調査を北朝鮮に要求していくべきだ。

 挑発行為で緊張高まる

 日朝政府間協議は2012年11月以来で、第2次安倍政権発足後初めてのものだ。日本側は拉致被害者の再調査や全員の帰国を改めて要求した。北朝鮮は拉致問題を議題として取り上げることは拒否せず、今後も政府間協議を続けていくことで一致した。

 北朝鮮が拉致問題について対話を拒絶しなかった背景には、厳しい経済状況がある。このため「できる限りのものを日本から手に入れよう」との狙いで対日関係改善を進めようとしているとみていい。

 関係改善を求める姿勢は北朝鮮の対応にも表れた。協議の冒頭、北朝鮮の代表は「凍りついていた川の水も解けて流れ出し、青い木の葉も芽生え始めた季節に、会談が開かれたのは大変意味がある」とにこやかに日朝関係の「春」の訪れを強調した。1日目の協議場である北朝鮮大使館内での自由撮影を日韓の報道陣に許可したのも異例のサービスだった。

 しかし、われわれは北朝鮮との関係改善、特に国交正常化には、拉致、核、ミサイル問題の「包括的解決」が必要との基本的立場を崩すべきではない。また対話は必要だが、その前提として北朝鮮を動かすには圧力が不可欠であることを忘れてはならない。

 北朝鮮は米国主導の日米韓首脳会談の最中に弾道ミサイルを発射。国連安全保障理事会がこれを非難する報道機関向け談話を発表すると「新しい形態の核実験も排除しない」と表明した。さらに黄海の北方限界線(NLL)付近で砲撃訓練を決行。100発余りの砲弾が韓国側海域に落下し、南北間の緊張が高まった。

 こうした挑発行為を行いながら日本との関係改善を進めようというのは無理な話だ。協議の中で、北朝鮮は日本の抗議に対してミサイル発射を正当化し、制裁措置の緩和を求めたが、応じられるわけがない。北朝鮮は植民地支配をめぐる「過去の清算」も求めたが、日本は「先の大戦に伴う請求権は放棄し、国交正常化後に経済協力をする」などとした平壌宣言に基づいて対処する立場を示した。

 国連人権理事会は日本人拉致を含む北朝鮮による国家ぐるみの人権侵害行為が「人道に対する罪」と断じた非難決議を採択した。

 北朝鮮は国際社会で孤立を深めている。このままでは、経済状況はますます悪化しよう。

 日米韓の結束強化を

 北朝鮮が日朝協議に応じたのは、オバマ米大統領の4月下旬の訪日に先立ち日米の連携にくさびを打ち込む狙いもあろう。日本と協議継続で一致する一方、「核実験」で米国を威嚇したことにも、それは表れている。北朝鮮に効果的な圧力を掛けるには、日米韓の結束強化が必要だ。そのためにも日韓関係の改善が急がれる。

(4月2日付社説)