大学本来の在り方の追求ほしい毎日、朝日「大学合格者ランキング
◆合格の秘訣を詳しく
サンデー毎日、週刊朝日が毎年恒例の「大学合格者高校別ランキング」を掲載している。先週に続いて今週号は、東大や京大などの後期試験の結果、旧帝大、合格発表の早い早慶など私立大学の高校別の合格者数をランクしている。来週、再来週号とその他の大学の発表が続いていくことになるのだろう。
最近はランキングだけでなく、その年の受験の特徴、受験者の動向、今後の見通しなど内容も多彩になってきた。週刊朝日(4月4日)は「全国私立校躍進の秘密」と題して駒場東邦(東京)、豊島岡女子学園(同)、聖光学院(神奈川)などが東大合格者を増やし、順位を伸ばした背景を学校関係者に聞いている。駒場東邦は前年より16人多い合格者を出した。
「今年は現行課程最後の入試で安全志向が強いと言われましたが、本校は例年通り『行きたいところにチャレンジを』と指導した。東大に限らず、第1志望を変えなかったことが良い結果につながったと思います」(同校進学指導教諭)。また公立校で京大9位の堀川高校の進路指導主事は「自主的に学ぶ姿勢が身に着くことが、受験にも大いに役立っている。学校側は『浪人してもいいよ』と見守り、支えるスタンス」など子供たちにいかに自信をつけさせるかに苦心している。なるほどと思う。大学進学関係者や受験生を持つ父兄らも、元気づけられる情報だ。
これらは学校関係者や受験生、家族らも関心のあるところ。部数的に毎年3月期には確実に一定の購買が見込める。編集部もネタ探しに頭を痛めることなく一息つける。だからこの欄は指定席扱いだ。当節は夏場の記事枯れの時期やバラエティー関連が多い年末にも、大学のランク付けや有名高校の品定めの記事が出ている。学校、予備校のほうも自分のところの宣伝にもなるわけで情報提供もやぶさかではない。ランク付け企画が長続きするゆえんだ。
◆大学に「国際化」の波
にもかかわらず、受験雑誌よろしく「速報」の大々的な見出しで、高校別の大学合格者数の順位が掲載されることの違和感はやはりぬぐえない。今日、豊かな経済社会で、子供たちの将来についての選択肢は多くなったものの、受験戦争は激化こそすれ減じていない。中学、いや小学校入学の段階で“お受験”に備えようと親たちが奔走している。ランキングはその尖兵の役割を果たしている。
以前、新聞社系の週刊誌が「ランキング」を載せることについて、親(おや)メディアの新聞で受験戦争の過熱ぶりを非難しながら、その一方で週刊誌で受験校の格付けをして受験熱を煽(あお)るような報道姿勢はおかしいと顰蹙(ひんしゅく)を買った。しかし、昨今は新聞のほうでも高校、大学教育かくあるべし、といった議論を真正面からしなくなったこともあって、相対的に週刊誌の「高校別ランキング」の弊は議論の対象とならなくなった。時代の変化をここにも見る。
その一方で、東大を例にとれば、推薦入学導入を決定したり、入学時期についての試行錯誤が長らく続いている。矢継ぎ早の提案には、国内外の本当に優秀な学生たちを見つけたいという意図と算段があり、大学側の今の受験体制に対する危機感が現れている。受験戦争の現実と大学側のいらだち、そのギャップが痛々しい。
日本の大学は入学は難しく卒業は易しい。これは受験があまりに苛烈(かれつ)で、大学に入ることが目的となり入学後の勉学に勝負をかけなくなってしまうからだ。従来、それが日本の大学の特徴だということで済ませておれたが、人材の奪い合いという国際化の波で悠長なことは言っていられなくなった。ノーベル賞獲得数を見ると、1位のケンブリッジ大学の83人、2位シカゴ大学82人、3位コロンビア大学77人などは別格。59位にようやく京大の7人が顔を出す。入試最難関といわれる東大医学部はゼロだ。
大学教育の在り方の模索は、当然入試改革にも及ぶだろう。こういった時代の要請に対比すれば、サンデー毎日や週刊朝日の「高校別ランキング」への力の入れ具合は疑問だ。
◆60年代に序列固定化
1960~70年代大学キャンパスの左翼学生運動は反体制を標榜(ひょうぼう)し、大学の研究者が産業とかかわりを持つことを難しくさせた。その結果、大学の実力の程度が見えにくくなって、その後、大学の虚像的な地位、序列が固定化するのを後押しした。大学改革の必然性はこんなところにもある。
(片上晴彦)