埼玉立てこもり事件、至近距離で医師に発砲
散弾銃で撃たれ即死状態、母親の死が事件の引き金に
埼玉県ふじみ野市の民家で人質の医師鈴木純一さん(44)が殺害された立てこもり事件で、住人の渡辺宏容疑者(66)=殺人容疑で送検=が訪問した鈴木さんに対し、至近距離から発砲していたことが29日、捜査関係者への取材で分かった。銃弾は体を貫通し、即死状態だったとみられる。
渡辺容疑者が自宅に鈴木さんらを呼び付けた際、現場となった和室に散弾銃を用意していた疑いも判明。県警は銃撃を計画していたとみて、詳しい経緯を調べている。
県警は同日、司法解剖の結果、鈴木さんの死因は胸に銃弾1発を受けたことによる心破裂だったと明らかにした。
捜査関係者によると、渡辺容疑者は立てこもりの最中、「(鈴木さんは)大丈夫だ。助けたい」などと捜査員に話していたが、警察が突入した際には死亡していた。県警は、同容疑者が鈴木さんの死亡を伏せ、虚偽の説明をしていたとみている。
また、渡辺容疑者は事件前日に亡くなった母親が以前通院していた医療機関で、診療方針をめぐり頻繁にトラブルを起こしていた。
関係者によると、母親を優先的に検査するよう求めたり、大声で騒ぎ出したりするなど、過剰な要求も多かったという。別の医療機関では、母親の治療について医師と意見が分かれると、後日長文の抗議文が届いたという。一方で、母親以外のことには紳士的な態度を見せていたとされる。
渡辺容疑者は逮捕後、「母が死んで自殺しようと思った。クリニックの人も殺そうと考えた」などと供述。県警は母親の死が事件の引き金になったとみて、詳しい動機を調べている。