ボクシング世界選手権、岡沢と坪井が優勝
岡沢セオンが恩返しの世界一、パリへ最高の再スタート
5日にベオグラードで行われたボクシング男子世界選手権で、日本勢初優勝が成し遂げられた。まずバンタム級決勝で坪井智也(自衛隊)が判定勝ち。ウエルター級決勝でも岡沢セオン(INSPA)が判定勝ちを収めた。東京五輪で2回戦敗退を喫した岡沢は「本当に苦しかった。自分を信じてやり切って、本当に安心している」と涙ながらに喜んだ。
岡沢は山形県出身。ガーナ出身の父と日本人の母を持つ。中大法学部卒で、その頭脳はアウトボクシングの駆け引きに生かされている。米国選手との決勝では、距離を保って相手の圧力をかわし、右ジャブ、左ストレートを的確に当てて3-2で判定勝ちした。
社会人になってからは鹿児島のジムで腕を磨き、2019年アジア選手権2位などの実績を残して注目されるようになった。アマチュアに強いこだわりを持っているため、プロ転向は視野にない。
今年からスポンサーがつき、「プロのアマチュアボクサー」の誇りと責任感が芽生えた。しかし、期待された東京五輪であっけなく敗退。「何も返せなかった自分が惨めだった」と振り返る。
「支えてくれた人に恩返しを」。世界選手権には新たな決意で臨んだ。今大会の優勝賞金は10万ドル(約1130万円)。「やっと夢のある額がアマチュア界にも出てきた。若い世代に、強くなったら稼げるところを見せたい」。そう誓い、有言実行してみせた。
3年後のパリ五輪に向け、最高の形で再スタートを切った25歳。「もっと強くなるので、これからも僕とアマボクシングを見てください」。世界一の勲章を胸に高みを目指す。(時事)