米国防見直し、日本は対中抑止へ役割果たせ
米国防総省は安全保障戦略の指針となる「4年ごとの国防計画見直し」(QDR)を発表した。国防予算を削減し、軍の規模を抑制せざるを得ない中、軍事力行使の必要性に慎重さを示しつつも、台頭する中国の海洋進出を念頭に今後もアジア太平洋地域を重視していく方針を掲げたものとなった。
対中抑止のためには地域における米軍のプレゼンスを維持することが不可欠だ。日本も相応の役割を果たさねばならない。
艦船の6割を太平洋に
オバマ米政権で2回目となるQDRは、今後20年を視野に国防戦略や兵力、装備の構成をどうしていくかなどについてまとめた文書である。今回はアジア太平洋地域に戦略の重心を移す「リバランス(再均衡)」の継続を表明、同地域の平和と安定が米国の「中心的な国益になりつつある」とした。
QDRでは、在日米海軍の強化を含めて米海軍艦船の6割相当を2020年までに太平洋地域に重点配備する方針を打ち出した。国防予算の削減を受け、陸軍を1940年以来最少となる44万程度まで削減しながら、海軍や空軍の戦力保持・強化に精力を傾け、抑止力の低下を防ぐ姿勢を強調した。財政難ばかりでなくイラクやアフガニスタンでの戦いに区切りがついたことを踏まえたものであろう。
中国については「軍事費が不透明な形で、早いペースで拡大している」と懸念を示した。中国の14年の国防予算は前年実績比12・2%増の8082億3000万元(約13兆4400億円)と4年連続の2桁増で、過去最高となった。
一方米国の国防予算は、10年間で約5000億㌦(約51兆円)もの削減を義務付けられている。そうした制約の中で、議会に提出した15会計年度(14年10月~15年9月)の戦費を除く国防予算案は約4956億㌦(約50兆7000億円)と前年度より4億㌦の微減となった。
QDRは日本を含む同盟・友好国との軍事協力の進化を、アジア重視戦略の「中心」に位置づけている。中国が昨年11月、尖閣諸島(沖縄県石垣市)を含む東シナ海の上空に防空識別圏を設定したこと、あるいは南シナ海で中国海軍の南海艦隊艦艇が「主権宣誓活動」を行うなど実効支配強化の動きが拡大している現実を直視すれば、日米同盟の一層の強化が必要だ。
中国は、日本列島から台湾、フィリピンの西側に至る第1列島線を越え、日本南方からグアム、インドネシアに至る第2列島線まで制海権を拡大しようとしている。米軍の接近、介入を阻止するために、潜水艦、対艦弾道ミサイル(ASBM)などにより接近阻止領域拒否(A2AD)戦略を推進している。
米国の「アジア重視」の狙いは、死活的に重要な地域の覇権を目指す中国の意図を挫(くじ)くことにある。具体的には西太平洋地域での有事に際しての米軍の作戦遂行体制の確立が目的だ。
集団自衛権の行使容認を
日本は集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈の変更や日米防衛協力のための指針(ガイドライン)見直しなど、幅広い日米間の防衛協力を着実に進めなければならない。
(3月12日付社説)