大震災3年 家庭、地域再建に尽くす年に


 東日本大震災からきょうで3年。岩手、宮城、福島の被災3県では道路などのインフラ復旧が目に見えて進んだが、地域の区画整理や復興住宅建設は遅れており、安定した生活環境を得ることのできない被災者も少なくない。家庭、地域の再建を主眼にした復興を目指す時だ。

復興予算増額は評価

 これまでに震災で寸断されるなど支障を来した3県内の国道のほとんどが復旧し、復興道路と復興支援道路も約4割が完成した。また被災した319漁港のうち約4割が陸揚げのための岸壁の改修作業を終了、被災した水産加工施設821カ所の約8割が業務を再開している。

 甚大な津波の被害を受けた宮城県女川町の女川港では岸壁約3・9㌔を1~1・2㍍かさ上げする工事が進むなど、漁業活動の順調さを印象付けている。国は2015年度までを集中復興期間と位置付け、復興予算増額などの措置を取っており、その点は評価したい。

 これに対し見劣りするのが、住宅再建の進捗具合だ。宮城・岩手両県の災害公営住宅約2万1000戸のうち、整備が完了したのは2%(着工済みは61%)しかない。

 さらに復興工程表に基づく土地区画整理についてはほとんど手付かずの状態だ。避難者は2月半ばの時点で約26万7000人、3県内で仮設住宅に暮らす人は1月末で9万7000人に上っている。

 区画整理や復興住宅建設の遅れは、被災者の家庭生活や地域の人々の日常的な交わりに負の影響を与えており、岩手、宮城両県では今後、何よりも住宅再建が急がれる。また原発事故に見舞われた福島県では帰還可能な地区の復興拠点を整備することがカギで、この1年が正念場となる。

 東北大が昨年6月、宮城県南部の児童・生徒を調査したところ、ストレスで支援の必要性が高い子供は14・9%で、一般的に支援が必要とされる子供の割合9・5%を上回った。授業中に落ち着きがなくぼーっと考え事をして集中力に欠ける児童が多いことや、保健室に安心できる家庭の姿を求め、同じ日に何度もやって来て「ただいま」と言う子がいることなどが報告された。

 これに対し「3年間、狭い仮設住宅で我慢した影響が一気に噴き出し、いらいらや甘えの行動が出ている」と関係者は指摘している。子供たちが心身の健康を回復する最良の方法は、一日も早く震災前の日常と家庭生活を取り戻すことだ。

 一方、新たな災害に備えて「自分の命は自分で守る」ことの大切さを伝える必要がある。大震災の経験から日頃、地元で対策を講じていないと災害時にできることは限られていることが改めて分かった。

地域の団結を高めよ

 自助・共助の精神が大切だ。避難時の声掛けや協力など、災害時には家族や近隣の人々との連携が大きな力になる。

 しかし、こうしたつながり、地域の防災の輪は一朝一夕にできるものではない。防災教育と定期的な防災訓練の実施などを通じ、団結力を高めることが求められる。

(3月11日付社説)