飛距離より確実性を、大谷の飛躍支えた新バット
自信に裏打ちされた方針転換、形状と材質を大胆に変更
「飛距離は困っていないので、率を上げたい」。米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平選手が昨季終了後、新シーズンで使用するバットに求めたのは、これまでとは大きく異なるものだった。
岩手・花巻東高時代から継続して、プロ入り後もアシックスの用具を使用している。用具の企画を担当する同社の河本勇真氏によれば日本ハム時代から行ってきた改良は、バットを細くして飛距離を求めるものが主な傾向だったという。ところが、今季に向けて大谷が重視したのは飛距離よりも確実性。大リーグの戦いを3年間経験し、フィジカル面でつかんだ自信に裏打ちされた方針転換だった。
大きく変わったのがバットの形状。打球が飛ぶヒットポイント(芯)を広げる狙いから、バット中央のロゴマーク付近からぐっと太くなる形となった。これによって重心の位置がヘッド寄りから手元に近くなり、「コントロールがしやすい」(大谷)バットになった。
材質も変更した。これまでは軟らかくてしなりが良いアオダモを使用していたが、今季からは「はじき返す感覚がいい」という要望を受けて硬いものに。もともと練習で使用していたメープルなど、さまざまな素材の中から選ばれたのがバーチだった。「メープルだと重くなってしまう。同じ重量でこの太さとなったときにバーチが最適だった」と河本氏は話す。
「こんなに大胆に変えた年はなかった」と河本氏。ましてや独特な形状への変更だっただけに、開幕前は不安な思いもあったという。結果的に見れば大きな飛躍の一年を支えることとなった新たな武器。「違和感なく振り切っている姿を見ると、変えてよかったなと思う」と目を細めた。