コロナ対策、反対ばかりで代案ない朝日社説に説得力も信頼性もなし

◆強烈な剣幕で反対論

 「あなたは反対ばかりするが、それならどんな代案があるのか」

 職場の議論でも時にこんな熱い場面に出くわす。司会をしていれば「まぁ、そういう反対のご意見も踏まえて、ではどんな解決策があるか、そっちに話を移しましょう」と間を取り持つ。

 ディベート(議論)の場合、現状分析から問題を明らかにし、その問題を解決するプランを提示し、さらにプランの実行性をメリット・デメリットの両面から吟味し、その上で最終決定を下す。それが職場でも日常生活でも役立つディベート技術とされる。反対ばかりで代案がなければ、説得力も信頼性もなく、嫌われるのがオチだ。

 新型コロナ対策をめぐる論議はどうか。感染者増を受け政府は緊急事態宣言を首都圏3県と大阪府に拡大し、まん延防止地域も広げた。菅義偉首相は「不要不急の外出や移動の自粛をお願いする」とし、ワクチン接種の推進を強調した。

 これに対して朝日は「根拠なき楽観と決別を」と真っ向から批判している(7月31日付社説)。ざっくり紹介すると、政府の見通しは甘い、国と自治体、国民は危機感を共有せよ、五輪によるお祭りムードが行動抑制の呼び掛けをかき消している、政府の以前の判断に誤りがあれば、率直に認めよ、首相にその先頭に立つ覚悟があるのか―といった内容だ。

 すさまじい剣幕の反対論と言ってよい。では、「楽観と決別」する、その先にどんなプランがあるのか、聞かせてほしいところだが、社説には書かれていない。どうやら五輪のお祭りムードに苛立(いらだ)っているようだ。

◆破綻した五輪反対論

 が、そんな朝日のそんな思惑は読売に先読みされているようで「感染拡大と五輪開催を結びつける意見があるが、筋違い」(31日付社説「緩みは五輪のせいではない」)とくぎを刺されている。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長もジュネーブの記者会見で東京五輪は感染拡大の危険性を最小限にするために「最善を尽くしてきた」と評価している(産経8月1日付)。

 そもそも五輪は世界から205国・地域から参加し現に進行中だ。散発的に陽性者が出ているが、クラスターは起きていない。朝日のコロナ禍を論拠とする五輪中止論(5月26日付社説)はとっくに破綻(はたん)している。いつまで五輪批判なのか、気が知れない。

 また朝日社説は「国民の行動変容につながるメッセージ」を打ち出せと首相や小池百合子都知事に迫っている。だが、どんなメッセージが必要なのか、それにも一切触れない。それほど行動変容を求めるなら、いっそ首都圏や大阪のロックダウン(都市封鎖)を主張すればよいではないか。そう思うが、むろん言及はない。実行するには憲法の緊急事態条項など新たな法整備が必要となるが、これには元来、「人権の朝日」は反対だ。

 もっとも菅首相はロックダウンに否定的だ。首相は欧州でロックダウンをやったが出口が見えなかったとし、「結果的にはワクチンだった」と、あくまでもワクチン接種を唱えている。ところが朝日はこれも気に入らないようで、政府分科会の尾身茂会長が現在を「最大の危機」と評しているのに「もっぱらワクチンへの期待を語る首相からは、そうした切迫感はうかがえない」と難癖を付けている。

◆最低の“ディベート”

 せめて産経のように「宣言地域を対象に、ワクチンの優先接種を進めるべきである」(31日付主張「宣言下の悪平等に陥るな」)といったプランの一つでも示せないものか。これは朝日には詮無い注文か。

 かくして反対ばかりで代案のない朝日社説はディベートとしては最低で、説得力も信頼性もなく、非生産的で読むのは時間の無駄となる。

(増 記代司)