中国が抱える課題を分析し、30年後も米国を凌駕できないとみる2誌

◆世界の覇権握る野望

 中国共産党は今年7月、結党100周年を迎えた。そして2049年に中国建国100年を迎える。

 中国は1978年に鄧小平の主導の下、「改革・開放」路線に転じて以来、西側の資本と技術を積極的に取り入れ、市場経済システムを導入。2010年に国内総生産(GDP)で日本を抜き、世界第2位の経済大国に躍り出た。今や「一帯一路」で発展途上国はおろかヨーロッパに触手を伸ばす。一方、軍事では南シナ海で軍事基地を造成。宇宙、科学技術、金融・通貨などあらゆる分野で存在感を示し世界の覇権を握ろうとしている。

 そんな中国の野望を分析しながら、この国が現在抱える課題、さらに30年後の姿を経済誌2誌が展望した。一つは週刊エコノミスト(7月6日号)で「日本人が知らない中国 本当の危機」。もう一つが週刊東洋経済(7月24日号)で「2050年の中国~世界の覇者か 落日の老大国か」との見出しを打つ。

 東洋経済は同号において世界の識者数名を集めて30年後の中国の姿を論じさせている。果たして中国が覇権を握っているかどうか。この点については多くの識者は懐疑的だ。

 「共産党の一党独裁は茨の道、イノベーションが枯渇する」(フランスの経済学者ジャック・アタリ)、「習近平国家主席は『2035年までにGDPを2倍にする』といっているが、現実的には難しいといえる」(マイケル・ぺティス北京大学教授)。

 また、米国を代表する国際政治学者であるジョセフ・ナイ米ハーバード大学教授は「2030年ごろにGDPで中国は米国を追い抜くことは可能だろう。だが、3つの問題に直面する。1つ目は高齢化…。2つ目は経済モデル…。3つ目は環境問題」と語り、軍事力(ハードパワー)でも文化・政治的価値観の魅力(ソフトパワー)でも米国を凌駕(りょうが)することはできないと訴える。

◆曲がり角の中国経済

 こうした中国に対する悲観的な見方は、7月6日号のエコノミストにおいても同じ。

 今から6年前の15年7月に中国政府は「中国製造2025」を打ち上げた。それまで「世界の工場」といわれた中国が、単なる「製造大国」から建国100年まで3段階のステップを通して質や技術でも世界に君臨する「製造強国」に転換しようとする経済戦略。具体的には10の重要分野と23品目を掲げる。その中には人工知能(AI)やロボット、次世代通信規格「5G」や半導体など次世代情報技術が含まれる。

 このうち半導体についてエコノミストは「現在の中国の自給率は16%程度で大半は海外からの輸入に頼る。米中対立がさらに激しくなって輸入が途絶えることになれば中国の産業界は即座に息が止まってしまう」(湯浅健司・日本経済研究センター首席研究員)といった中国の弱点を挙げ、だからこそ莫大(ばくだい)な補助金を使って国産化を進めようとしているのだが、「指導部の思惑通りにいっていない」(同)という。

 さらに深刻なのが急速に進む少子化と習近平政権によるさまざまな締め付けが社会の活力をそぐというのである。「中国は今後も次々と少子化対策を繰り出していくことが予想されるが、中長期的には人口減少社会に向き合わざるを得ない。…潮目が変わった。成長しか知らない社会が停滞、縮小という異次元の状況を迎えることができるであろうか。中国経済は大きな曲がり角に立っている」(エコノミスト)と指摘する。

◆日米同盟が脅威抑制

 前述のジョセフ・ナイ教授は「米中間の問題で重要になるのが日米同盟だ。中国が成長する中、日本に備えがなければ中国からの挑発が続くだろう。日米同盟があれば中国の脅威は和らぐ」と日米同盟の重要性を説く。中国が核心的利益と称して台湾侵攻することも十分に考えられる。中国の動向に今後も注視が必要だ。

(湯朝 肇)