メーガン妃インタビュー「勝者と敗者」を順位付けただけのNW日本版

◆仕掛け人は当の本人

 メーガン妃をインタビューした人物をご存じだろうか。日本ではなじみが薄いが、オプラ・ウィンフリー氏といい、米トーク番組のレジェンド級の司会者・俳優で、「世界で最も有力な女性」と評されている人物だ。

 日本ではピンとこないかもしれないが、あるSNSで、例えれば「黒柳徹子と上沼恵美子に安藤優子を足して3で割ったような人物」と評されていた。スケール感はだいぶ違うものの、言い得て妙だ。知性、話術、仕切りの上手(うま)さは卓越している。

 メーガン妃とヘンリー王子のインタビューは英王室はもちろん世界中に衝撃を与えた。ニューズウィーク日本版(3月23日号)がインタビューによる「勝者と敗者」を書いている。「英王室」や「人種差別」といった内容には踏み込まずに、この事案の関係者たちに勝敗と順位を付けただけの記事だ。

 「無傷の勝ち組」1位はもちろんメーガン妃だ。「彼女が『やり手』であることを世界に示せた」としている。してみると、やはりこれはメーガン妃が仕掛けた「勝負」だったのだ。そして狙い通りに「勝った」と世界は評価した。彼女の親族からは非難が出ていたが。

 2位にウィンフリー氏が挙げられた。トーク番組を終了してから10年近く経(た)っているが、鋭い切れ味は失われてはいなかった。「二人の本音を引き出せたのは彼女の功績だ」と好評価だ。納得のインタビューだった。

 3位はこれを放映したCBSである。米紙ニューヨークタイムズによると「放映権の取得に700万㌦(約7億6000万円)も払った」そうだが、放送後のネットストリーミング配信でも「大いに稼げる」から、元を取って十分である。

◆負け組筆頭は英王室

 英王室の面々はどう評価されているのだろうか。一番の「悪玉」は「英王室」そのもので20位最下位。「誰が悪い」という発言は極力せずに、制度としての「王室」の問題点を強く印象付けたメーガン妃の“賢さ”が際立つ(※筆者駐=“賢さ”の前に2文字の伏字があることをご承知おきいただきたい)。

 「人種差別」の張本人と目されている兄嫁キャサリン妃は「負け組」の16位。「メーガンはしきりに彼女はちゃんと謝罪したと言い、兄嫁とけんかなどしていないと繰り返した」として、メーガン妃を「いい人」にしようという編集意図が見える。

 義兄のウイリアム王子は17位、義父のチャールズ皇太子は19位と厳しい点数なのは、「だれが見てもそうだ」と共感が得られる“安全圏”に立って同誌が点を付けているのが分かる。エリザベス女王を「勝敗つかず組」の13位に置いたのもその脈絡だろう。

 同誌は「ヘンリー&メーガン夫妻にとっては特定の王族を名指しするよりも王室という謎多き組織のほうが批判しやすかった」と総括した。

◆「小室問題」とは別次元

 このメーガン妃にある日本の男性を重ねているのが週刊新潮(3月25日号)だ。「『メーガン妃』に酷似『眞子さま』を操る『小室圭さん』」の記事である。同誌ならば当然、そういう見方になるだろう。

 記事では人種差別発言やメーガン妃の「確信犯」ぶりが結構詳しく書いてあり、点数だけ付けて匂わせたニューズウィーク誌よりもインタビューの背景を知るには日本の老舗週刊誌の方が役立つ。

 とはいえ、メーガン妃と小室氏は「似ている」ようだが、実際は大きく違う。米国社会が苦しみながら抱え闘っている人種差別問題は小室さんにはない。「小室さんが先々、結婚が叶わなかったからといって“皇室の誰それに辞退するよう言われた”と暴露しても、世間から“あなたの家の問題でしょう”と跳ね返されて終わりでしょう」と「名古屋大学大学院の河西秀哉准教授」は同誌に語っている。このように、要は小室家庭の金銭問題なのだ。

 結婚してしまったケースと、結婚にすらたどり着けていないものとでは大きな差がある。新潮の記事は面白いが、そこが違う。

(岩崎 哲)