小林化工処分 健康軽視の企業体質改善せよ
製薬会社「小林化工」(福井県あわら市)が製造した皮膚病などの治療薬に睡眠導入剤成分が混入していた問題で、福井県は医薬品医療機器法に基づき、同社に116日間の業務停止処分と業務改善命令を出した。
小林化工は問題の治療薬以外でも、虚偽記録の作成や品質試験結果の捏造などの違反を長年にわたって続けていた。製薬会社としての信頼は地に落ちたと言えよう。
効率優先で不正黙認
116日間の業務停止処分は過去最長となる。しかし違法な製造管理が常態化していたにもかかわらず、経営陣が改善策を講じなかったことを考えれば当然の措置だ。
睡眠導入剤成分が混入したイトラコナゾール錠50「MEEK」をめぐっては、作業員が昨年6月に取り違えて混入。品質試験で異常が見られたが、検証せずに出荷されていた。
服用後に意識を失うなどの健康被害が200人以上から寄せられた。このうち救急搬送や入院が確認された人は40人以上、自動車などによる事故関連は20人以上に上っている。因果関係は不明だが、服用した高齢者2人の死亡も確認された。
誤りを招いた原料の「継ぎ足し」は、国の承認を得ていない工程だった。これだけでも製薬会社としてあってはならないことだ。
ところがその後の調査で、小林化工は延べ約500製品のうち、約390製品で手順書などを二重に作成し、約180製品は未承認の工程で製造していたことが分かった。このような法令違反は2005年ごろから続き、出荷前に必要な品質試験の一部は1970年代ごろから実施されていなかった。あまりにもずさんな実態である。
経営陣や現場責任者はこうした現状を把握しながら黙認していたという。背景には人手不足があり、社員教育も十分に行われていなかった。製薬会社が生産効率を優先するあまり、患者の健康を軽視するなど言語道断である。
小林化工は国の後発医薬品(ジェネリック)推進の流れの中で業績を伸ばし、近年は工場や研究所などを次々と増設した。後発薬は安価で、使用推進は医療費の抑制にもつながる。
しかし、今回の問題はその信頼も大きく損なった。後発薬メーカーで作る日本ジェネリック製薬協会は、小林化工を除名処分とするなど厳しい姿勢で臨んでいる。自主点検の統一基準作成などで、不正を防止することが求められる。
福井県は2018年に小林化工への抜き打ち調査を実施し、20年にも通告して調査を行ったが、組織的な隠蔽(いんぺい)や虚偽報告によって数々の不正を見抜けなかった。行政による監視強化も急ぐ必要がある。
患者第一の原点確認を
小林化工は猛省し、効率優先の企業体質を改善しない限り、患者の信頼を回復することはできまい。
今年8月施行の改正医薬品医療機器法では、製薬会社の法令順守体制強化のために「責任役員」を置くことが義務付けられる。製薬業界全体が患者第一の原点を改めて確認すべきだ。