銀座クラブ通いにコロナ法改正でもザル法と指摘しない「サンモニ」
◆宣言下で議員に批判
新型コロナウイルスの緊急事態宣言が10都府県で来月7日まで延長されることになった。世界でも感染者数は1億人を超えており、テレビの報道番組ではコロナ論議が絶えない。通常国会でも引き続きコロナ問題が主要テーマになっている。
1月31日放送のTBS「サンデーモーニング」は、参院予算委員会での新型コロナウイルス対策のための特措法改正案審議、緊急事態宣言発令中に自民・公明の与党幹部議員が深夜の東京・銀座のクラブで会食した問題を扱った。
番組では「議員の銀座クラブ通い/与党譲歩で“改正案”合意」と題して、深夜にクラブで会食した自民党の松本純衆院議員が国対委員長代理を辞任(その後離党)、公明党の遠山清彦衆院議員が幹事長代理を辞任(その後議員辞職)したことを取り上げたが、処分は当然だろう。
目下、ラストオーダーは午後7時半と店の入り口や店内に掲示物を張っている飲食店が首都圏で目立つ所、このニュースに触れた視聴者の中には、緊急事態宣言発令下で深夜営業しているクラブにも疑問が湧くはずだ。
宣言が発令された都府県では、クラスター発生を予防するため飲食店に午後8時までの営業時間短縮を求めている。それが深夜まで営業していた例を見ても、昨年春制定した新型インフルエンザ特措法改正による新型コロナ対策のための特措法は、ザル法だった側面を浮き彫りにした。
◆過料下げ効果に疑問
今回、その効果を強化するために罰則規定を設ける同特措法改正案と感染症法改正案が審議され、成立した。番組では、野党側の質問の中で「自民党と公明党の議員は銀座のクラブに行っても謝罪のみ、国民には罰則、こんなことで理解が得られるのか」(共産党・小池晃参院議員)との発言を引用し、罰則や与党への批判に力を入れた。
また、同15日の厚生科学審議会感染部会で、入院を拒否した感染者に罰則を与えることに反対する意見が多数を占めたことを指摘するなど、与党に罰則規定を緩和させて修正合意した野党側に理解のある内容だった。
が、議員の夜の銀座通いを批判する一方で、営業時間短縮はクラスター発生を防ぐことが目的であり、その深夜営業をも問題点として挙げるべきだろう。緊急事態宣言発令で東京都は時短要請に応じた事業者に、店舗ごと一律168万円を支給するが、この金額を天秤に掛けても深夜営業をする店があるということだ。ファストフードから高級店まで客の支払い金額は高低さまざまだが、「一律」措置に対して立場に応じた打算が働く余地がある。
改正特措法では、行政罰で前科にならない過料が引き下げられた。新設の「まん延防止等重点措置」の下での時短命令違反は20万円以下の過料(原案30万円以下)、緊急事態宣言下の時短・休業命令違反は30万円以下の過料(原案50万円以下)だ。168万円の支援金で時短要請に応じない夜の高級店にとって“飲み代”程度の過料を、事実上の営業経費と考えないだろうか。
◆政争の具と化す矛盾
フジテレビ「日曜報道ザプライム」は冒頭で、「危機感が足りない」(立憲民主党・蓮舫参院議員)との国会での野党側の追及に掛け合わせながら、自公議員の銀座クラブ問題を扱った。
コメントしたレギュラー出演者の橋下徹氏は「自覚が足りない」と批判。ただ、橋下氏は「日本の法律制度は自粛するかどうか自由に任されている。銀座の店も時短要請に従わなくてもいい自由はある。そういう仕組みにしてきた政治の方が重大問題だと思う」と述べた。
野党は夜の銀座問題を政権批判の好機としても、特措法の罰則規定は緩めることで存在感を示そうとした。宣言を発令し自粛要請する与党側の政治家の深夜会食、これを批判しながら罰則を緩める野党。政争の具と化し、どちらも矛盾していないか。
(窪田伸雄)