新型コロナの指定感染症「5類相当」への下げを一貫して主張する新潮
◆「2類相当」が足かせ
週刊新潮は一貫して新型コロナウイルスの指定感染症「2類相当」を季節性インフルエンザ並みの指定に下げろと主張している。「第3波」が来て、1日2000人以上の感染者が確認されるようになり、政府や自治体はGo Toキャンペーンの地域制限を決断し、経済活動にブレーキを踏んでいる中で、12月3日号でも改めてそれを訴えた。
これから消費が増える年末に向かっているというのに、Go Toトラベルに制限が掛けられれば、多少戻りつつあった経済を再び冷え込ませ、最悪の場合、倒産や自殺件数を増やす可能性もある。コロナ対策か経済対策か、ブレーキかアクセルか、悩ましいところなのだ。
この判断の足かせになっているのが「2類相当」という指定である。新型コロナをインフルエンザ程度と見るか、より厄介で恐ろしい感染症と見るかで、医療関係者の間でも見解が分かれるところだが、同誌はインフルエンザ程度と見て、“正しく恐れながら”経済活動、社会活動を行っていこうと訴え続けている。
その中でまず注目すべきは「医療崩壊」をどう見るかだ。心配されているのが「病床使用率」。新型コロナ重症者を受け入れる病床数は全国で「2万5000床以上」が確保されており、実際の入院患者数は「5000人」、つまり使用率は「20%」にすぎない。
患者が増えれば、残り80%でも心もとないと思うかもしれないが、「京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授」は「既に減少に転じていて、北海道では現時点で感染のピークは過ぎています」と指摘する。だから「Go Toトラベルを止めても、収束スピードは恐らく変化しません」というのだ。
むしろ、病床を確保していることで、他の患者にしわ寄せがいき、担当する看護師など人員も縛られる。スウェーデンの例を「医師で医療ジャーナリストの森田洋之氏」が紹介している。同国は「日本より感染者数が多く、全体の病床数はとても少ないのに、なんとかしているのは、臨機応変に病床数を動かしているから」だという。
◆自然免疫で対処可能
Go Toトラベルを止めてもあまり意味がない、という主張も納得し得る。同誌は宮沢准教授が考案した「目玉焼きモデル」を紹介する。「五つの同心円」を描き、中心のゾーン1が「どんちゃん騒ぎをする飲み屋など」。ゾーン2が家庭、3が一般人エリア、4「かなり防衛している人」、5が「引きこもり」だ。
1で火が付いて2に飛び火するが、3で鎮火する。「いまはゾーン2の家庭内感染が主戦場なので、ここに対策を打てばよい」と宮沢氏は言う。「ゾーン3~5がとても広く、1と2が狭い」。だから3、4が経済活動する分には問題なく、むしろ4を5(引きこもり)に押しやっては「経済的に大変なことにな」るという分析は興味深い。
「集団免疫」も同誌が繰り返し取り上げる内容だ。「国際医療福祉大学大学院の高橋泰教授」が、「新型コロナは毒性が弱く、多くの場合、“軍隊”たる抗体の出動なしに、自然免疫という“巡査”で対処できる。すると無症状か軽い風邪ほどの症状にとどまる。こうしてすでに日本人の3人に1人は、新型コロナに暴露(体内に入ること)したと考えられる」と同誌に述べている。
◆外出自粛は逆効果に
「不要不急の外出」が止められているが、これも逆効果となる。「浜松医療センター院長補佐の矢野邦夫医師」は、「感染対策をして旅行するのと、対策せずに地元にとどまるのでは、後者のほうが感染リスクは高い」とし、「大阪大学人間科学研究科未来共創センター招聘教授の石蔵文信氏」は「ステイホームで面会自粛を徹底していれば、認知症は進行します」と述べている。
「年間1000万人程度が感染し、関連死を含めれば1万人ほど死者が出」ているインフルエンザだが、それでも医療崩壊しないのは「指定病院だけでなく、全国のクリニックで治療に当たる」からだ。新型コロナを「2類相当」からインフルと同じ「5類相当」に変えることで、ブレーキとアクセルの矛盾も解ける。同誌はこの主張を一貫して続けていってほしい。
(岩崎 哲)