新型コロナワクチンを感染再拡大時に特集した「サンデーLIVE」

◆「Go To」の矛盾

 新型コロナウイルス感染が再拡大している。先週3連休入りした21日まで感染者が東京で3日連続500人を超え、国内感染者も2592人を記録した同日まで4日連続で最多を更新していたこともあり、22日の報道番組では政府の観光支援事業「Go To トラベル」、外食需要喚起策「Go To イート」による各観光地・繁華街の人出の多さと感染対策、経済効果を期待した飲食業界の声や医療崩壊を懸念する医療従事者の声などに焦点を当てた。

 フジテレビ「日曜報道ザプライム」は、レギュラーコメンテーターの橋下徹氏、自民党幹事長代行の野田聖子氏、立憲民主党幹事長の福山哲郎氏が議論する中で、橋下氏は「政府が緊急にやらないといけないのは『Go To』の名前を変えるべきだ。誤ったメッセージが出てしまっている」と訴えた。

 「静かな会話とか静かな旅行を名目に入れた支援策」と捉えられるようなネーミングを求めたわけだが、遅かった。番組の合間のCMでも某ホテルや量販店がこの時期、賑(にぎ)やかに「Go To トラベル」を宣伝しており、政府の支援策への期待は高い。しかし、番組中の視聴者アンケートでは7割余りが「Go To」に否定的な回答の一方、実際の3連休は我慢の連休とならない矛盾がある。

 政治家や専門家が同番組やNHK「日曜討論」などで議論をすれば、感染者の増加に政府は手を打てと言うことになる。その後、政府は感染が拡大している札幌、大阪両市を「Go To トラベル」から一時除外し、東京都は酒を提供する飲食店に再び営業時間を午後10時までとする時短を一時要請した。

◆会食時マスクいかに

 クラスター感染の特徴を持つ新型コロナウイルスの人から人への感染を防ぐ対策と、「Go To」で「旅行に行こう」「食べに行こう」と、お出掛けを奨励する経済対策を両立させるのは難しい舵(かじ)取りだ。その象徴が、菅義偉首相の「会食時もマスク」の要請ではなかろうか。

 「日曜報道ザプライム」に遠隔出演した神奈川県知事の黒岩祐治氏は、会食事もマスクという首相の提唱を強く支持。しかし、番組が横浜・中華街のレストランで取材した様子では、家族連れをはじめマスクをしていなかった。店側は客のマスク着用を支持していたが、口に入れる時はマスクを外し、話す時はマスクを着用するこまめな着脱はどこまで定着するだろうか。

 このような苦労が続くだけにワクチン開発に対する期待は大きい。テレビ朝日の「サンデーLIVE」は、「“遺伝子医学の奇跡” 新型コロナワクチンで『来年は普通の生活も可能…』に!?」との特集を組み、米国などで進むワクチン開発を扱った。

 ファイザー社とモデルナ社がそれぞれ有効性95%、94・5%のワクチン開発の最終段階に入ったと発表し、米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長が米通信社に「驚くほど素晴らしい。来年後半には通常に近い生活に戻れるだろう」とコメントしたことを受けた内容だ。

 ワクチン開発に当たって、たんぱく質を構成するアミノ酸の情報を伝える「メッセンジャー(伝令)RNA(リボ核酸)」が応用されていることについて、ゲスト出演した京都府立医科大学准教授の内田智士氏は「体内で治療薬を作ってくれるワクチンで、しかも短時間で作れる」と説明。作り方は「たこ焼きと同じ」という例えだが、型にはめれば大量にできるという。

◆化ける自粛のはけ口

 初めてのワクチンであり、未知なことは多いが、日本には来年春から夏にかけて「ある程度」入ると予想した。米国ではワクチン発表のたびに株価が急騰するなど、“戦勝”の予感が動いている。

 「Go To」で大勢が出掛け、欧州で再度の外出規制に暴動が起き、米国でワクチン発表に歓喜する…。自粛で貯まっているエネルギーのはけ口はコロナ後に大化けするかもしれない。

(窪田伸雄)