コロナ禍で再編・没落が加速する鉄道や地方紙などを特集した2誌
地方エリートの没落
依然として終息に程遠い新型コロナウイルスによる感染症。今回の新型コロナで、窮地に立つ業界あるいは逆に逆境をばねにして業績を伸ばしている業界があることはこれまでにも取り上げてきたが、新型コロナによって改善どころか、むしろ再編や没落が加速する業種があるという。
そうした業界、業種を今回、経済誌が取り上げた。一つは、週刊東洋経済の「激震!エアライン鉄道」(10月3日号)、そしてもう一つが週刊ダイヤモンドの「地方エリートの没落 地銀 地方紙 百貨店」(10月10日号)である。
東洋経済はリードの中で、「人の移動が収益源となる航空・鉄道業界は、新型コロナウイルスの直撃で事業構造の根本的な転換が迫られている」と指摘する。一方、ダイヤモンドは、「地域経済を牛耳り、世論を形成し、消費の場を提供してきたのがそれぞれ、地方銀行、地方紙、そして地場百貨店だった。だが人口減少と高齢化で成長は望めず、地域に深く根差しているが故にビジネスモデルを転換するのは容易ではない。彼ら地方エリートたちはこのまま没落していく運命なのだろうか」と問い掛ける。
今回、経済誌に取り上げられている業界は、実はコロナ騒動に入る以前から課題の多い業界ではあった。新型コロナを契機にここにきてその没落ぶりが顕著になってきたということだ。
例えば、鉄道について言えば、東洋経済が「JR本州3社の20年度第1四半期決算は、JR東日本とJR西日本の売上高が半減、JR東海の売上高は7割減だった」と指摘するほどの落ち込み。東海道新幹線や山陽新幹線を持つJR本州3社でさえこのありさまなのを見れば地方のJR各社のさらなる落ち込みは自明の理。JR北海道は新型コロナで全線赤字。今年度は300億円以上の減収見通しで「もはや黒字を出せる構造にはない」(道内選出の国会議員)との声も出るほど。
在り方問われる新聞
ところで、両誌の特集の中で目に付いたのが地方紙である。地方紙といえば1県に1紙で、ほぼ独占的に発行している。その地域においては全国紙を凌駕(りょうが)するシェアを持ち、地域における第4の権力を“わがもの顔”にしていた。その地方紙が、今、苦戦を強いられている。以前にブロック紙として一定の地位を占めている北海道新聞の幹部が次のように愚痴っているのを聞いたことがある。「活字離れが進み、スマホが席巻している中で、百貨店のようにあらゆるジャンルの記事を配信する大手マスコミの時代は終わった」と。
一方、日本でとりわけ地方で電子新聞が普及しない要因の一つに新聞の宅配制度があるとの指摘もある。「販売店の力が大きく、配達を要しない電子新聞が普及することになれば販売店の死活問題になる」(道内出版社の幹部)という。ダイヤモンドは地方紙について「紙と印刷工場、限定された販売エリアと高齢化した読者、そして旧態依然の宅配制度という制約に縛られた地方紙の在り方が、今まさに問われている」と結論付ける。
ただ、そうしたハード的な側面もさることながら、作り手である記者の目が読者と懸け離れている点も見逃すことはできない。一つ例を挙げるとすれば、8日に後志管内寿都町の片岡春雄町長が、原発から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定に向けた文献調査について「応募を決意した」と表明し、翌日には同管内神恵内村の高橋昌幸村長も調査受け入れを表明した。
住民無視の紙面作り
これについて北海道新聞は、「まさに独断専行 住民の声聞いて」などといった見出しを随所に散らばせる。しかし、今回の受け入れ決定の経緯については、地元住民の強い要望があったことは事実なのである。そうした点を無視して「初めから反対ありき」で紙面を構成する手法がもはや通用しなくなってきたということであり、そうしたこれまでの姿勢が読者離れを引き起こしていることに気付くべきである。
(湯朝 肇)