菅首相と河野大臣の深い関係と軋轢が諌言に聞こえる「バンキシャ」
◆人物評拾い人事説明
菅義偉内閣が発足し20日の報道番組でも新内閣が主要な話題を占めていた。特に、菅首相および、首相が「政権のど真ん中」に位置付けた規制改革を担当する行革担当相に抜擢(ばってき)された河野太郎氏に焦点が当てられていたが、日本テレビ「真相報道バンキシャ!」は菅氏と河野氏の関係を掘り下げていた。
菅氏と河野氏は、神奈川県に選挙区を持つ同期(1996年衆院選)当選組で、自民党が野党になった2009年の総裁選に出馬した河野氏を菅氏が推薦した関係などを紹介。菅氏が「同期で内閣総理大臣になれるのは河野太郎」と周辺に語っていたというエピソードには、当時の総裁選で河野陣営で戦った本気度が窺(うかが)われる。が、まだ政治家の「夢」の段階だったと言えよう。
番組は、政権復帰して官房長官になった菅氏が自民党YouTubeのコンテンツ「山本一太の“直滑降ストリーム”」に出演した中で、河野氏について「あのアンバランスの感覚が私、大好きなんですよ」「少し外れているけど、まったくブレない」などと語ったシーンを引用し、盟友ぶりを印象付けた。
ただ、最近の軋轢(あつれき)も忘れなかった。「ある議員」に菅氏は河野氏について「かわいいけど何をするか分からない」と語り、自民党総裁選に向けて、防衛相だった河野氏が出馬に一時意欲を見せたことに不信感を持ち、河野氏が外相だった昨春、令和への改元のタイミングにもかかわらず外交文書の日時を西暦だけにしようとしたのに対し「何を考えているんだ」と怒ったとされる周辺情報などだ。
◆ポスト菅氏の有力株
さらに、5月に新型コロナウイルス感染の医療従事者を激励しようと東京上空に航空自衛隊のブルーインパルスを飛ばし、防衛相だった河野氏が記者会見で飛行決定の経緯を問われたところ、「プロセスはどうでもいい」と発言。説明責任が問題になったことに、菅氏は「社会常識がない」と述べたと言われることなどを指摘した。
ここで、同テレビ局官邸キャップは、菅氏が本当に河野氏を信頼していたら官房長官になったろうが、発言などが危ういから行革担当相だった―とコメント。目玉人事の背景は、何をするか分からないので失敗にならないポストということらしい。
が、番組は河野氏の適性を問う形を変えた諌言(かんげん)のようにも思える。何の適性かと言えば、もちろん首相だ。敗れた総裁候補らも再起を期すだろうが、菅政権の党3役・閣僚で将来、ポスト菅時代の総理総裁候補として、前内閣で外相、防衛相、今回目玉閣僚の河野氏がどうしても目立つ。
「夢」が現実に近づけば、さまざまなことが問われ批判されるようになる。祖父・父に河野一郎元副首相、河野洋平元自民党総裁を持つ政治の名家で、祖父は安倍前首相の大叔父、佐藤栄作元首相に総裁選で歯が立たず、父は野党自民党で総裁となったが首相にはなれなかった。3代かけた悲願の登頂だが、「征服すべきは山の頂上ではなく自分自身だ」という言葉がある。
◆“安倍ロス”サンモニ
これまで安倍晋三前首相に、“ファシズムは民主主義から生まれた”とばかりに批判的な角度で報道してきたTBS「サンデーモーニング」は、法政大学総長の田中優子氏が遠隔出演。司会の関口宏氏に菅首相は「法政大学ですよね」と切り出されると、相槌(あいづち)を打ち「たぶん法政大学、注目していただけたと思う。誇りを持てる首相になっていただきたい」と、拍子抜けする温かいエールだった。
それでも番組は、安倍前政権の「負の遺産」として「森友・加計・桜を見る会」を復習し、「ゴミ箱にフタをかけるまねをするな」(涌井雅之氏)といった調子だった。菅内閣を「安倍晋三さんがいない安倍内閣」(小池晃共産党書記局長)といった野党や同番組は、まだ「ゴミ箱」から持ち出すのだろうか。番組の“安倍ロス”は響くかも知れない。
(窪田伸雄)