マイナス20%成長必至の経済に危機感強め2次補正の充実求めた各紙
◆デフレに逆戻り懸念
政府は27日、1次補正と合わせて事業規模が230兆円超となる「空前絶後」(安倍晋三首相)の2次補正予算案を閣議決定した。
1次補正の成立(先月末)から、1カ月もたたない2次補正予算案の決定である。コロナ禍の日本経済に与えた影響がいかに大きいかを示すものだが、そうした予算づくりを強く後押ししたのが18日発表の1~3月期国内総生産(GDP)統計であろう。
新聞各紙も事の重大性を意識してか、産経を除く6紙が社説で論評を掲載した。見出しを並べると、19日付読売「消費促す環境作りが重要だ」、朝日「感染抑止との両輪で」、日経「早期収束の成否が経済再生を左右する」、東京「官民で負の連鎖断て」、20日付毎日「長期化に備えた支援策を」、本紙「未曽有の危機に財政惜しむな」である。
各紙に危機感が漂うのは、コロナ禍が本格化する前の1~3月期で内外需とも大きく落ち込み、実質成長率が年率3・4%減となったが、緊急事態宣言で外出自粛が本格化した4月以降、「経済状況は一段と悪化している」(読売など)からだ。民間エコノミストの調査で4~6月期は戦後最悪のマイナス20%前後の見通しが出ているのである。
しかも、感染症との闘いは長期戦を覚悟せざるを得ないため、「コロナとの共存を前提に、経済を正常に近づける努力を続けたい」として、前述した見出しの通り、個人消費を促す環境づくりの重要性を説いたのが読売。
同紙には「先行き不安による買い控えが長引けば、デフレに逆戻りする恐れがある」との危機感もあるからだが、ただ、同紙が挙げた事業再開のために各業界団体が示した指針や、感染拡大の中でも新しい需要を掘り起こす努力だけで、そうした環境づくりがどこまでできるのかどうか、心もとなさが残る。
◆消費税に触れぬ日経
朝日は、今目指すべきは「感染拡大の防止」と「経済の再拡大」の好循環をつくりだすことだ、と説いた。
同紙はさらに、少なくとも医療や福祉、物流など暮らしに不可欠な分野を支える人々が安心して働ける環境を整えねばならない、と強調したが正論である。
日経は、「国内の感染者や死者数は各国に比べて格段に少なく、今後はこの基調を確実に保ったまま経済活動の再開を模索する段階に入る」とした。
25日に緊急事態宣言が全国的に解除され、結果論として同紙の見立て通りである。「まず、政府は効果的な20年度第2次補正予算を編成し、苦境に立たされている事業者や家計に必要な支援を早急に届けるべきだ」との同紙の指摘も尤(もっと)もである。
ただ、同紙は米欧などと異なり、日本の成長率が昨年10~12月期からマイナスに転じていて、それは「強力な金融緩和を軸とした『アベノミクス』にもかかわらず、人口減や高齢化の逆風を生産性の向上で補いきれていない。コロナ禍が直撃したのは、安定した成長基盤がまだ整わないうちだった」としたが、消費税増税の影響を意図的かどうかは分らないが無視していることは指摘しておきたい。
◆「雇用守る」が最優先
話を戻す。東京は思いのほか現実論を展開し、4~6月期は「年率20%以上の歴史的なマイナス成長を覚悟する必要もあるだろう」と指摘。アパレル大手のレナウンが経営破綻したことに「コロナ禍の影響が中小だけでなく大企業にも及びつつあることを裏付けた形だ」とした。
そして、第2次補正では規模の大小を問わず企業の急激な経営悪化を防ぐための施策、具体的には政府系金融機関を通じた事実上の政府保証による融資枠の大胆な拡充策や、金融機能強化法の改正などによる金融機関への支援強化などを訴えた。妥当な提言である。毎日も「長期化に備え、経済の基盤が損なわれないようにする対策が必要だ」とし「まずは国民生活に直結する雇用を守ること」と正論を述べた。
(床井明男)