新型コロナ禍後の世界大恐慌の再来を歴史的視点から分析する各誌
◆長期停滞時代に突入
政府は5月14日、8都道府県を除く39県で新型コロナウイルス対策による緊急事態宣言を解除した。その後、21日には大阪、京都、兵庫の解除を表明、さらに25日にも専門家会議を開き、感染者の減少傾向が続けば東京や北海道などの解除の可能性もあるとしている。長引く規制は地域経済のみならず国内経済そのものに大きな影響が出るとの懸念がある。リーマン・ショック時を超える不況到来と言われる中で、わが国経済は果たしてV字回復を実現できるのか。
そうした中で、経済誌は世界的不況をもたらす今回の新型コロナウイルスによる影響を歴史あるいは経済の視点から分析する。例えば、週刊東洋経済(23日号)では「コロナ異常経済~未曽有の長期停滞時代に突入」とし、国内外の情勢を踏まえながら日本国内の主要産業の動向を分析する。また、週刊ダイヤモンド(同号)は、「コロナ恐慌~収入激減&定年危機」と題し、コロナ危機がわれわれ庶民、勤労者に与える諸要素を列挙し、生活設計の見直しを提言する。一方、週刊エコノミスト(26日号)は、「歴史でわかる経済危機~大恐慌再来でどうなる世界」との見出しを付け、過去の大恐慌を引き合いに出しながら、今回のコロナ恐慌を分析し、その意義を見いだそうとする。
この中で、東洋経済は新型コロナによって引き起こされた世界的な経済的混乱について、「3月の感染爆発で地獄を味わった欧米主要国も、4月下旬以降は新規感染者が減少。出口戦略も本格化している。ただし、前のめりに経済活動の再開を企図する米国には危うさが漂う。…危機は国境を越えて目まぐるしく連鎖し、深まっていくことだろう。われわれが立っているのは、長いトンネルの入り口なのである」と悲観論を滲ませる。
さらに、同誌に登場した細谷雄一・慶応大法学部教授は、「コロナ後の経済」について、「新型コロナウイルスが完全に終息する見通しのないまま、今のような不安な状態が続いていく。これが新しい世界を考えるうえでの『ニューノーマル』だ」と断言。まさに長期にわたる不安な状況下での経済活動こそ「異常経済」と言いたげで、同誌は長い停滞を予測する。
◆疫病が歴史の転換点
一方、エコノミストは「これから先に何が待ち受けるのか、歴史の教訓に学ぶしかない」と過去の事例を挙げた。14世紀ヨーロッパを覆ったペスト。コロンブスの新大陸発見以降、欧州から米大陸にもたらされた天然痘、1800年初頭、英国の植民地インドから世界中に広がったコレラ。さらに20世紀初頭米国から始まったスペイン風邪など多くの人命を奪った「疫病」が世界史の転換点になっているとする。
確かに、疫病のパンデミック(世界的流行)の背景には覇権国家を中心とするグローバルな人、モノの行き来があるようだ。16世紀、スペインによって滅ぼされたインカ帝国。18世紀、産業革命の成功を背景に世界を席巻した英国。20世紀、世界の覇権国家として君臨した米国。そして21世紀、米国に挑戦状を突き付け新たな覇権国家にならんとする中国。
◆100年前の構図と酷似
エコノミストはさらにスペイン風邪が流行した当時、すなわち100年前の「英国VSドイツ」と現在の「米国VS中国」の覇権の構図を比較する。「19世紀中ごろから発達した鉄と蒸気機関の文明は、グローバル化を推し進めた。…この恩恵をフルに受けたのが当時の新興国ドイツであった。…ドイツが覇権国英国に挑戦した」(作家、板谷敏彦氏)。
さらに、「そして、この(第2次グローバリゼーションの)恩恵を最も受けた新興国中国が米国の覇権に挑戦しようとしているのが現代である」(同)と綴る。板谷氏は現在の国際情勢が、100年前の構図と酷似しているとするが、スペイン風邪と新型コロナまで出てくるとすれば、確かに偶然とは言い難い。
(湯朝 肇)