宇宙作戦隊 安全保障の能力強化を図れ
防衛省はきょう、航空自衛隊に「宇宙作戦隊」を新設する。
空自の府中基地(東京都府中市)を拠点に20人規模で編成する。宇宙安全保障の能力強化を図るべきだ。
増大する中露の脅威
宇宙作戦隊は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や米宇宙軍と協力し、外国からの日本の人工衛星へのジャミング(電波妨害)の防止、スペースデブリと呼ばれる宇宙ごみや不審衛星などの監視任務に従事する。2022年度には100人規模に拡充し、23年度からの本格的運用を目指す。河野太郎防衛相は「自衛隊史上初めての宇宙領域専門部隊で、わが国の優位性を早期に獲得する観点から、非常に意義がある」と強調した。
安保における宇宙空間の重要性は著しく増大している。ロシアは15年8月に空軍と航空宇宙防衛軍を統合した「航空宇宙軍」を、中国は同年末に人民解放軍にサイバーや衛星防衛担当の戦略支援部隊を新設した。
中国やロシアは他国の人工衛星を攻撃する「キラー衛星」の開発に乗り出している。キラー衛星によって通信衛星の機能が破壊されれば、自衛隊内の秘密の通信ができなくなる。測位衛星が被害を受ければ、ミサイルの誘導などに必要な正確な位置の把握が困難になる。情報収集衛星の場合、敵の軍事動向を把握する能力が著しく低下する。キラー衛星が実用化されれば、宇宙における中露の脅威は増大しよう。
また、中国は地上から発射するミサイルによって人工衛星を破壊する実験に成功した。しかし、これによって宇宙空間に大量の宇宙ごみを発生させた。
一方、米国では19年12月に6番目の軍として新設された宇宙軍が今月、本格的な運用に向けて兵員の一般募集を開始。空軍からの異動を可能にする措置も取った。米国では宇宙を「戦闘領域」と位置付け、宇宙空間での攻撃への対処も想定する。
日本も対応が急がれる。小規模とは言え、宇宙作戦隊は米宇宙軍との人的交流によりノウハウの習得を目指す。米宇宙軍から指導教官を招くほか、自衛隊員を同軍に派遣する。
宇宙作戦隊を新設したほか、政府は20年代に有事の際に他国の軍事衛星を無能力化させる妨害衛星の打ち上げを検討しているという。宇宙安保の能力向上を着実に進める必要がある。
このためには十分な予算が求められる。日本は今年度予算で宇宙関連経費として総額506億円を計上しているが、主要各国と比べるとまだまだ少ないと言える。
日米両国は宇宙、サイバー、電磁波などの新領域で連携体制の構築を急いでいる。サイバー分野に関しては、昨年の外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)で、日本へのサイバー攻撃について、対日防衛義務を定めた日米安保条約第5条の対象とすることで一致した。
日米同盟深化につなげよ
空自は米軍との衛星情報共有や、電波妨害への共同対処なども想定し、具体的な運用に関する協定の策定作業を継続している。宇宙安保に関する連携を強化し、日米同盟の深化につなげたい。