日本人の営為や習慣が感染死亡者数を抑えていると指摘する週刊現代

◆死者数ケタ違いの差

 連休期間と連休後の週刊誌は盛りだくさん、思い付くまま挙げてみたい。アエラ5月18日号「BCGとコロナ 高まる相関性」で阪大免疫学フロンティア研究センター招聘(しょうへい)教授の宮坂昌之さんが「結核の予防接種BCGが、新型コロナに対する抵抗力を高めている」と力説。

 宮坂教授の調査によると、5月7日現在、人口100万人当たりの死者数は、BCGの集団接種を行わない米国が227人、イタリアが490人。過去に接種していたフランスは396人、スペインは553人。一方、接種している中国は3・2人、韓国が5・0人、日本は4・4人、台湾は0・3人。

 同教授は「ケタ違いの差であり、偶然の一致では片付けられない」とし、「BCGが自然免疫と獲得免疫の両方を活性化している可能性」を指摘(「獲得免疫」は特定のウイルスに対する抗体を作る働き)。BCGの“効果”については、他のメディアも伝えているが、免疫学の権威に語らせ説得力が増している。

 週刊現代5月2・9日号で「新型コロナウイルス禍 なぜ日本の死者数はこんなに少ないのか」を編集部がまとめている。まず、わが国が取ってきた基本的感染対策の「クラスター対策の成功」があり、次に現時点で医療崩壊がぎりぎり免れている点を指摘。

 記事後半では、日頃からの衛生意識の高さについて。仏在住12年の実業家は、海外の人と比べ日本人の綺麗(きれい)好きを強調。手洗い、うがい、マスク着用など、日本列島・各地の衛生環境の平準化、実施率の高さも大きい。ほかに日本人の生活習慣―料理はそれぞれに配膳するのが一般的、家に入るとき靴を脱ぐ、キスやハグの習慣がない、電車やバスの待ち時間や車内のおしゃべりが少ないなどを挙げる。日本語の特性として、欧米諸国の人が使う言語の発声よりも唾が飛びにくい。

 記事中、PCR検査が少なく、新型コロナによる死が見落とされており、死者の実数はもっと多いのではという疑問を呈している。しかしこれについては先日、尾見茂・専門家会議副座長が記者会見で、「亡くなった人の肺の状態で死因の区別がついている」という趣旨の発言をし「隠れコロナ死」の存在は否定的だ。

 ほかに「ウイルスが変異したから」という英国の研究報告を挙げているが、死亡者の多少とは「無関係」という専門家のコメントも同時に載せている。BCGの予防接種済みで、多くの国民が抗体を持っているだろうというのは先の記事と同じ。

 日本人の営為や長年の習慣が、巧まずして感染を抑制する力になっていることが分かる。

◆国民無視の政権か?

 アエラ5月4・11日号の「日本を待ち受ける光と真っ暗闇 『コロナ禍』がもたらす変容と転換」で、白井聡さん(政治学者、京都精華大学教員)は、出だしから「世界中の国が、少なくとも『国民の命を真剣に守らなければならない』という意思がある点で一致しています。今の日本にはそれさえない。元々そういう政権なんです」と決め付けている。

 そして「連鎖倒産などで人々が首をくくるような悲劇が起きないようにするのが、経済対策の本質のはず。安倍政権は、これは景気の問題だと考えている節がいまだにある」。「経済再生担当大臣が、新型コロナの対策大臣になっていることがその象徴」と。「それでもまだ腐った安倍政治を支持し続けるのか」の見出し。暴論の類いだ。

◆信長と光秀の城紹介

 ゴールデンウイークにちなみ週刊新潮5月7・14日号「緊急事態宣言が明けたら行きたい 『光秀の城』『信長の城』」。城郭ライター・萩原さちこさんが、信長と光秀二人が築いた城の「強く美しく進化した」先進性を紹介。安土城は全域を高い石垣で囲んだ総石垣、小牧山城も主郭を3段の石垣で取り巻く。興味深い。

 ただ戦国時代には、天正地震や伏見地震など大地震が頻発した。記事にはないが、巨石や巧みな土台造りは「地震対策」が大きいのではないか。(片上晴彦)