家賃支援など第2次補正予算編成への注文で先行、力の入る左派系紙

◆与野党協力求む産経

 国民に一律10万円の現金を給付することなどを盛り込んだ2020年度補正予算が先月末に成立したばかりだが、今はそれでは足りないとして2次補正予算案編成への動きが本格化してきている。

 新聞社説の論評は、1次補正編成への注文や成立時では、保守系紙、左派系紙とも掲載日時に大差なかったが、2次補正への注文では左派系紙が先行し、保守系紙は鈍いという対照を見せている。

 12日までに2次補正に関係する社説を挙げると次の通り。9日付朝日「家賃支援策/具体化と実行を早急に」、同産経「中小テナント家賃/破綻の回避へ支援を急げ」、12日付毎日「与党の家賃支援案/規模もスピードも足りぬ」、同東京「2次補正編成へ/学生たちの未来守れ」――。

 列挙した通り、保守系紙は産経のみ。同紙独り気を吐いている感じで、あとは左派系紙ばかりである。

 2次補正で政策の大きな柱になりそうなのが、朝日や産経、毎日が取り上げた家賃支援策である。緊急事態宣言が発令され、6日の期限が先週には月末まで延長された。営業自粛でも家賃は支払わねばならず、特に経営規模の小さい店にとっては深刻な問題であり支援を急がねばならないのだが、「与党の政策決定には時間がかかっ」(産経)たのである。

 この家賃支援は4月下旬から与党で議論され、決まったのが8日。既に立憲民主などの野党が支援法案を国会に提出しており、産経が「早期支援を実現するためにも与野党が協力してもらいたい」と求めたのも道理である。

 与党の支援策で同紙が懸念するのは、政府系金融機関などの無利子・無担保融資を利用することで、同機関などには既に「資金繰りに窮する中小企業から融資申し込みが殺到しており、新たな融資を受けるには相当の時間がかかる見込みだ」という点。尤(もっと)な指摘である。

◆手続き簡素化訴える

 一方、左派系紙も指摘は同様で、朝日は「政府は手続きを簡素化し、融資の停滞を解消する必要がある」と強調し、制度の詳細を詰め、早急に実施すべきだとした。

 朝日はまた、「地域の実情に詳しい自治体と連携することも一つの手」とし、「全国一律の助成は国が、必要に応じた上乗せ策は自治体が、それぞれ担う。その際は、政府による財政面の後押しが欠かせない」としたが、一理ある。

 政府系金融機関などを利用する手法の問題とともに、前述の「規模もスピードも…」と批判したのは毎日である。

 与党案は収入が大幅に減った事業者に対し、月50万円を上限に、家賃の3分の2を半年分支給するが、毎日は「50万円は東京都の平均家賃というが、飲食店などは平均より高い場合が多い。とりわけ都心は高額で負担も重くなる」「福岡市など一部の自治体は独自に家賃の8割を補助している」として不十分だとした。

 また同紙は、「家賃の支援はただでさえ遅れている。政府は6月にも支援を始めたい意向だが、緊急事態宣言の発令から2カ月以上も後になる。これ以上遅れると事業者の窮状はますます深まる」と手厳しい。

◆交付金の拡充は評価

 これら3紙から厳しい批判を浴びる与党案で、いずれからも評価されたのが、公明党の主張で取り入れられた、家賃を独自支援している自治体への交付金拡充である。

 厳しく批判した毎日も、「家賃の水準や事業者と大家の距離感などは地域によって異なる。自治体に配分する財源を増やせば、地域の事情に応じた、きめ細かな対応ができるようになる」と評価する。

 これら3紙とは別に、困窮する学生に焦点を当てたのが東京である。同紙は経済的理由で約1200人の学生、大学院生のうちほぼ2割が退学を考えているという調査結果などを踏まえ、「力強く素早い対策」を求めた。

 2次補正では左派系紙が先行した感があり、力の入った論調が目立った。やっと昨13日付日経で、学生支援の社説が出た。

(床井明男)