安倍政権のコロナ対策を批判する一方で中国の動きに警戒を促す文春

◆メディアが不信助長

 コロナ対策で安倍バッシング、検察庁法改正で安倍バッシング、憲法改正で安倍バッシング、何が何でもバッシングだ。今や週刊誌でまともに安倍政権を評価しようというところはないのか。

 コロナだが、日本は世界的に見て新型コロナウイルス感染での死者数が圧倒的に少ない(17日付本欄参照)。数字を見れば防疫で成功した国として認められる資格は十分にある。「世界をリードするK防疫」と自画自賛しながら、緩めた途端クラブでクラスターが発生する国とは違う。

 だが、なぜだか国内はもとより世界でも安倍コロナ対策は不評である。数字を目の前にしてもなお、欧米メディアは「奇妙な成功」「死者数が奇跡的に少ない」などと自らの惨劇をよそに、首をひねりながら、しぶしぶ認める始末だ。

 原因を考えた。安倍コロナ対策をまともに評価させないのは日本メディアのせいだ。海外メディア特派員の多くは現地の報道を引用したり参考にして記事を書く。その引用・参考元が“安倍批判”で塗りつぶされていれば、当然、日本では「安倍政権は評判が悪い」という認識になる。

 コロナ対策ではなおその傾向が強い。やることなすこと全て批判の対象となる。政府と国民が一致団結して取り組まなければならないコロナに対して、最大の敵は不信と内部分裂だが、それを助長しているのがメディアと野党なのである。

◆課題は経済・2波防止

 週刊新潮(21日号)は専門家会議に丸投げしている安倍政権を批判している。新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の役割は「医学的見地からの(政府への)助言」であり、医療崩壊を防ぐことに力点が置かれているのであって、経済対策の助言まで求められているわけではない。

 同誌は、だが安倍首相は常に「専門家の意見を聞いて」を繰り返し、「慎重になって専門家のいうなりになってしまって」(政治部記者)「思考停止」していると批判する。本来なら医学的見地を専門家から聞きながら、政治や経済を総合的に判断して方針を出すのが政治であり政権の役割だ。その点で安倍首相には批判される点があろう。

 しかし、マスクを配れば「アベノマスク」と揶揄され、「10万円給付」をしても「焼け石に水」と批判される。安倍首相も人の子、意欲気力が“ダダ下がり”になるのも無理はない。だが14日の緊急事態宣言一部解除の記者会見では具体的な支援対策を打ち出した。これを見れば決して「思考停止」に陥っているだけとは言い切れない。同誌はこの時点で本号が店頭に出ていたため、会見・方針の評価を記事に入れることは物理的に無理だった。次号に注目したい。

 週刊文春(21日号)も「特大ワイド・コロナの主役と悪役」の特集で、「コロナ対策の失敗は『厚労省のせい』」にしていると安倍首相を批判している。だが今はそんなことを言っている場合か。緊要の課題は経済活動再開と第2波防止であり、特効薬の認可とワクチンの開発状況だ。焦点の当て方が前向きでない。

 そんな同誌だが、「コロナの悪役」として「火事場泥棒を許すな」と中国の厚顔ぶりを取り上げているところはいい。「マスク買い占めと支援のおためごかし」「尖閣諸島への連日の接近」「香港民主化弾圧」を行っている中国の行状を再確認させてくれる。コロナ騒動で政権批判ばかりに目が行くが、どさくさに紛れてうごめく中国への警戒を怠ってはならないことを気付かせてくれる。

◆外せぬ元慰安婦問題

 この週、外せない話題なのに扱いが不十分だったのが「元慰安婦」問題である。「元慰安婦」李容洙氏が長年共に運動を続けてきた支援団体を告発したのだ。日韓外交のトゲとなっている同問題で韓国側のスクラムが崩れた。4月の総選挙で当選した活動家の中心人物・尹美香氏の金銭・モラル・スキャンダルに発展しそうな状況だ。

 これまで「元慰安婦」問題を散々取り上げてきた両誌ならばこその詳報が期待されたが、新潮がわずかに取り上げていたにすぎず、文春にはどこを探しても関連記事は見当たらなかった。この程度で終わる話題ではないので、今後の企画に期待したい。

(岩崎 哲)