尖閣沖領海侵入、挑発強める中国を牽制せよ
中国公船が沖縄県・尖閣諸島沖で日本領海への侵入を繰り返している。
中国は南シナ海でも不当な支配を強める動きを見せている。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、これに乗じて挑発を強めることは許されない。
中国公船が3日連続で
尖閣沖では8日、中国海警局の「海警」4隻が約2時間にわたって領海に侵入し航行。このうち2隻が日本漁船に接近し、追尾したという。この2隻は9日夜に再び侵入し、10日夜まで約26時間にわたって領海内にとどまった。
領海侵入を容認できないのはもちろんだが、今回はとりわけ悪質である。日本政府が中国に厳重に抗議したのは当然だ。ところが日本の抗議に対し、中国外務省は「漁船は中国の領海で違法に操業していた」などと逆に日本を批判した。
尖閣はわが国固有の領土である。中国が領有権を主張し始めたのは、周辺に石油が埋蔵されている可能性が高いことを指摘した国連の調査報告が出た後の1970年代初頭だ。中国の批判は不当で身勝手極まりないものである。
このところ、中国の挑発的な動きが増えている。今年1~3月の中国機に対する自衛隊機の緊急発進(スクランブル)の回数は152回と高水準。中国公船の尖閣周辺海域への入域日数も3月は昨年から倍増している。領海侵入は今回の3日連続で今年10回目となった。
特に、漁船を追尾したことは重大な挑発だと言っていい。中国公船は4月、南シナ海の西沙(英語名パラセル)諸島付近でベトナム漁船に追突し沈没させた。中国は空母「遼寧」を派遣し、行政区設置に踏み切るなど、南シナ海で不当な支配の強化を進めている。
南シナ海に関しても、オランダ・ハーグの仲裁裁判所は2016年7月、中国が主張する歴史的権利を否定する判決を下している。中国は判決を「紙くず」と切り捨てているが、南シナ海での動きが国際法に反していることは疑いようがない。
中国が挑発を強める背景には、空母での新型コロナの集団感染で米軍の展開能力が低下していることがある。米空母「セオドア・ルーズベルト」では、乗組員数百人が陽性と診断され、米領グアムでの停留を余儀なくされている。
こうした中、海上自衛隊の護衛艦「あけぼの」は先月、島嶼(とうしょ)奪還作戦に使われる米強襲揚陸艦「アメリカ」と東シナ海で共同訓練を実施。米海軍第7艦隊は先月末、南シナ海で中国が埋め立てた人工島の12カイリ(約22㌔)以内に艦船を派遣する「航行の自由作戦」を2日連続で行った。中国公船による尖閣沖の領海侵入を踏まえ、日米両国は中国への牽制(けんせい)を強めるべきだ。
日本は実効支配の強化を
中国海警局は18年7月、準軍事組織の人民武装警察部隊(武警)に移管された。今月10日に尖閣沖の接続水域を航行した中国公船には、機関砲のようなものが搭載されていたという。日米は抑止力の一層の向上を図る必要がある。また、日本政府は尖閣の公務員常駐化など実効支配の強化にも努めるべきだ。