WHO総会 台湾参加への国際支援強めよ
台湾は18日に開催予定の世界保健機関(WHO)年次総会へのオブザーバー参加を希望している。台湾は「一つの中国」原則を主張する中国の圧力でWHOから排除されているが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が続く中で中国やWHOの対応は容認し難い。WHOは台湾の参加を認めるべきだ。
強硬に反対する中国
2009~16年に総会に招かれた台湾は、17年からは中国の反対で参加できておらず、テレビ会議の形式で行われる今回も参加許可の通知を現時点で受け取っていない。台湾政府の新型コロナ対策本部トップ、陳時中・衛生福利部長(日本の厚生労働相に相当)は「台湾は国際社会の一員として、全人類の健康と安全のために国際社会と協力する能力も意思もある」と訴え、総会参加を求めた。
台湾は新型コロナの感染拡大を効果的に抑制し、世界的な評価を高めた。台湾がWHO総会に参加し、加盟国と情報を共有することには大きな意義があると言える。日本はこれまで、台湾の参加について「国際保健の課題への対応に当たっては地理的な空白を生じさせるべきではない」(菅義偉官房長官)として繰り返し支持を表明してきた。ポンペオ米国務長官も、WHOのテドロス事務局長に台湾を招待するよう要請した。
しかし、中国は台湾の参加に強硬に反対している。台湾メディアによると、中国国務院台湾事務弁公室の馬暁光報道官は台湾の蔡英文政権について「台湾独立の主張を捨てていない」と述べ、改めて反対を表明した。
昨年のWHO総会は、非加盟のバチカンやパレスチナ自治政府のオブザーバー参加が認められた。WHO憲章は「人種、宗教、政治信条や経済的・社会的条件によって差別されることなく、最高水準の健康に恵まれることは、あらゆる人々にとっての基本的人権の一つ」とうたっている。これを踏まえれば、中国の姿勢は明らかにおかしい。
中国の習近平政権は「一つの中国」原則を認めない蔡政権に圧力を強めてきた。16年の蔡政権発足後、中国の資金援助を背景に台湾と断交した国は7カ国に上り、外交関係を維持するのは15カ国に減少した。台湾のWHO総会参加に反対するのも、こうした流れの中にある。台湾を孤立させ、中台統一につなげる戦略だ。
習氏は既に「一国二制度」で中台統一を目指す考えを示している。日米欧など台湾を支持する国々は、台湾の参加実現に向けて連携し、支援を強化する必要がある。
人権軽視のテドロス氏
一方、テドロス氏は4月、個人的な脅迫や人種差別を受けているとして、その出所を「台湾」と名指しするなど台湾への姿勢を硬化させている。
テドロス氏は新型コロナ対策の初動の遅れや中国寄りの発言で批判を浴びている。背景には、母国エチオピアが中国から多額の経済支援を受けているだけでなく、テドロス氏がイデオロギーの面で中国共産党に近いことがある。人権を軽視し、一党独裁体制を堅持する中国共産党を支持するのであれば、国際機関トップの資格はあるまい。