新型コロナは中国の進出著しいアフリカで爆発すると楡周平さん警告

◆途上国の経済は脆弱

 新型コロナウイルス感染拡大関連で、興味ある3本の記事を取り上げておきたい。一つは作家・楡周平さんの「『東京五輪』は来年も開催できない!」(週刊新潮4月9日号)という寄稿記事。「(今後)感染が広がると見られているのが、アフリカ、東南アジア、中東、南米など、いわゆる『途上国』」で、「とりわけ注視すべきはアフリカ」と楡さんは見る。

 「中国はアフリカの資源に目を付け、莫大な資金を投下し、人もたくさん散らばらせている。それを考えれば、新型コロナが爆発しないワケがない。今後、広がっていくであろう感染が、果たしてわずか『1年』で終息しているのか。また、終息したとして、オリンピックに選手を送り出せるほどの国情に回復しているのか。考えれば考えるほど、『完全な形での五輪』は困難に思える」と。

 さらに「先進国が(経済)恐慌に陥れば、より脆弱な途上国の経済はひとたまりもない。その状況でオリンピックに人や資金を割く余裕があるのでしょうか」「ワクチンの開発に1年半はかかると言われていますし、治療薬もまだ確立されていない」と手厳しい。

 中国を感染源としたコロナ騒動。以前から経済支援を名目に途上国へは常時、中国人を派遣しており、その勢いはすさまじい。新型コロナウイルス禍の歴史的・社会的下地は、とっくに出来上がっていたという楡さんの眼力は鋭い。

◆危うさ増す中国依存

 二つ目の記事は、生物学者・池田清彦さんと医学者・養老孟司さんの「緊急対談 気分はもう『コロナ戦争』!?」(同4月2日号)。

 池田さんが「インフルエンザだと誰も気にしない。それよりもはるかに国内の死亡者が少ないコロナが大騒ぎになるのは(中略)、人間にとって『わからないもの』がどれほど怖いかということを暗に示している」と。これに対し「この感染に対する態度は本人の意思だけでは決められません。正解がはっきり出せない部類のことだから。一方で、これだけ多くの人々が国境を越えて頻繁に往来するグローバルな世の中になった。そうなれば、いつでも今回のような事態は起こりうる」と養老さん。

 その上で「中国から観光客が来なくなって、それこそ倒産する企業も出てきて気の毒なのだけど、そもそも何か一つに依存するのは危ないということはわかっていたはず。常識として理解できても商売になるとわかれば手を出してしまう」と、不確実性の時代の中国依存を厳しく批判。最近の人・物の流れの急激過ぎる変化。それを危惧する心が大いに欠如していた、と思う。

◆神の怒りは40日間?

 三つ目は、「夏裘(かきゅう)冬扇」と題した思想史家・片山杜秀さんのコラム「暑さ寒さも彼岸まで、神の怒りも四十日まで」(同号)。18世紀後半、イタリアのベネチアの港では、疫病の流行がなくても、毛皮、毛織物などは荷ほどきして40日間、空気にさらされ、持ち主に引き渡されたという。

 40日は、聖書でノアの箱舟で豪雨が続いた期間で、「神の怒りも40日で止む」と信じられ、人々に説得力があった。それが敷衍(ふえん)され「為政者は非常時的対応を始めて40日ほど経つところで(中略)次の対応が見つかったとか、ガス抜きができないと、人心の動揺は制御不能となって行く。『ノアの箱舟』の法則である」「一種の統治ルール」という。

 この法則を利用したのが、中国の習近平国家主席。「北京に新型肺炎対策の指導グループを組織して、非常時対応に集中しだし、人民の海外への団体旅行を禁じたのは1月27日。国家主席自ら武漢市に乗り込み、湖北省の状況は安定してきていると述べ、事実上の抑え込み宣言をしたのは3月10日。その間、44日」がその一例。そして「習近平指導部は、災厄時の40日という時間の重さを、よく心得ているのだろう」と。異色のコラムだ。

(片上晴彦)