家では湯船に漬からず
地球だより
こちらに長く居て謎が解けないことの一つに風呂文化がある。韓国人は風呂好きなのに昔から自宅に浴槽があることは少なく、近年は高層マンションなどでは浴槽があるにはあってもお湯を張って漬かる習慣があまりない。どんなに寒い冬場でもシャワーで済ませる人が多い。代わりに床暖房が普及しているため家の中が暖かく、湯船が恋しいという思いに駆られないのだと知人は言っていた。
冬の朝は氷点下10度以下まで下がる日もざらで、韓国に赴任したての頃は近所の「沐浴湯」(銭湯)によく通ったものだ。湯船に漬かると体に温かさが染み入って溶けそうな感覚に陥る。だいたい周りでは垢(あか)すりを体の隅々までしたり、45度はあろう「熱湯」と水風呂である「冷湯」に交互に入ったり、軽い体操をしたりと皆が結構忙しくしている。温度別に並ぶサウナ室を梯子(はしご)する人もいるが、筆者のような烏の行水にはとても真似できない。
温泉地も多く、南東部・釜山の「東莱温泉」や中部・大田の「儒城温泉」は有名だ。どちらも日本統治時代に一挙に開発が進み、湯に足を漬けた鶴のケガが治ったという伝承がどちらにもある。これに飽き足らず韓国人の中には温泉目当てに別府や箱根まで足を運ぶ観光客も多い。
しかし、これだけ風呂好きなのに自宅の風呂文化は発達しない。超競争社会に生きる現代韓国人こそ毎晩、湯船に漬かってストレス解消した方がいいのに…。
(U)