出生数90万人割れ、国を挙げて少子化食い止めよ


 2019年に国内で誕生した日本人の子供の数が86万4000人と、1899年の統計開始以来、初めて90万人を割り込む見通しとなった。

 一方、死亡数は137万6000人と戦後最多で、自然減は51万2000人と初めて50万人を超えた。人口減少が続けば国力が低下しかねない。国を挙げて少子化を食い止めるべきだ。

「人口省」創設の意見も

 厚生労働省の研究機関は、90万人割れは2021年と推計していたが、予想以上の速さで少子化が進んでいることが明らかとなった。有識者からは人口政策を所管する「人口省」を創設すべきだとの意見も出ている。

 少子化の要因として挙げられるのは、非婚化や晩婚化だ。かつて日本では見合いで結婚する人が多かった。しかし、恋愛結婚が増えたことで50歳までに一度も結婚したことのない「生涯未婚率」が大幅に上昇したとの指摘もある。

 結婚は当人同士の問題だが、周囲の働き掛けも重要だと言えよう。企業や自治体、地域などが協力し、結婚を希望する男女の出会いの場を広げてほしい。政府も「婚活」事業などへの支援を一層強化する必要がある。

 一方、晩婚化が進む背景には、高齢出産を安易に考える風潮があろう。だが、女性は35歳を過ぎると卵子の質が低下して妊娠率も下がる。

 政府が以前、配布を検討した「女性手帳」は、このような妊娠・出産に関する知識を深めてもらうためのものだった。しかし「早期出産がよいという価値観の押し付け」などの批判を受け、導入を断念したのは実に残念だった。

 こうした批判はフェミニストやジェンダーフリー論者によるものだろう。少子化対策を主導する政府の足を引っ張ることは無責任極まる。

 加藤寛治農林水産副大臣が昨年5月に「(新婚夫婦に)3人以上の子供を産んでほしい」と述べ、「セクハラ」と批判されて発言の撤回に追い込まれたことも記憶に新しい。一部メディアは「大きなお世話」「戦前の『産めよ増やせよ』を想像させる」と決めつけたが、人口減少がこれだけ深刻な問題となっている中、理解し難い対応である。政府と国民が危機感を共有して少子化対策に取り組まなければ日本は衰退しかねない。

 子供のいる家庭には経済的な支援も重要だ。国や自治体は、出産の祝い金や、特に子供が多い家庭への支援をこれまで以上に手厚くする必要がある。政府には、子供を育てやすい地方への移住を促進する政策も求められよう。

育児は大きな社会貢献

 いつの時代でも、子孫が増えて繁栄することは人々の大きな願いだった。しかし現在の日本では、個人主義が蔓延(まんえん)し、結婚や家庭が昔ほど重んじられなくなっている。少子化を食い止めるには、このような状況を改善することも不可欠だ。

 子供を産み育てることは、両親や親族にとっての喜びであるだけでなく、将来国家を支える人材を増やすという意味で大きな社会貢献でもある。結婚や育児の素晴らしさを若い人たちに伝えていきたい。