三大宗教の許しと和解が平和の礎
中東平和イニシアチブ10周年
12月19~21日、イスラエルのエルサレムにおいて、「中東における超宗教と国際関係-平和と安定を目指して」をテーマに、天宙平和連合(UPF)主催の国際会議が開かれた。23カ国から約70人の宗教指導者・政治家・学識者らが集い、意見を交し合った。
(エルサレム・森田陽子、ホド・ベンツビ、写真提供=UPFイスラエル)
宗教と政治の連携が課題
ユダヤ教・キリスト教・イスラム教という三大宗教の発祥地である中東の紛争は、宗教間の和解なくしてあり得ず、さらに宗教家と政治家が協調して紛争解決に取り組む必要がある。そうしたビジョンを掲げ、UPFは2003年より中東平和イニシアチブ(MEPI)のプロジェクトを推進してきた。
第2次インティファーダ(反イスラエル闘争)の影響により観光業が打撃を受けていた当時、毎月のようにMEPIの代表団がイスラエルを訪れ、聖地巡礼と共に中東平和のための会議を設けてきた。13年5月には、その功績が認められ、イスラエル観光省から記念品が贈呈されている。
梁昌植(ヤン・チャンシク)UPF世界会長は20日、「文鮮明(ムン・ソンミョン)師(UPF創始者)は、アブラハムを祖とする三大宗教の一体化が世界情勢の成り行きを左右すると心から信じていた。03年12月、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教が互いに歴史上の過ちを認め、尊重し合う和解の儀式をエルサレムで執り行った。それは、あまりにも難しい行事であったが、2万人が集う大集会となり、それ以来50回以上にわたりMEPIの活動がこの聖地で行われてきた」とMEPIの由来を説明した。
梁会長によると来月にはジュネーブで開かれる国連主催の国際会議にUPF代表団を送り、和平プロセスに宗教指導者が一翼を担う必要があることを訴える予定である。
同セッションに参加した元イスラエル国会議員ラン・コーヘン氏は、「偉大な指導者に必要な条件は明確な目標を持つことと、謙遜であることである。どちらも現在のイスラエル政府に足りない点である」と指摘した。
また、米国から参加した元下院議員ボブ・マクエウィン氏は、「政治家は、自分が政治家として存続するため民衆の要求に応じようとする。宗教家は神の言葉を伝え民衆を導く。政治家が明確なビジョンを持つためには、宗教家に耳を傾ける必要がある」と訴えた。
イスラエル・パレスチナ問題について、元イスラエル社会福祉大臣でユダヤ教ラビ(指導者)であるミハエル・マルキオー氏は「今の1カ国に二つの民族が共存している状態は、どうしても公平にはなりにくい。神が両方に約束した土地であるならば、どちらも住む権利がある。2カ国独立の方向に進めるべきだ」と意見を述べた。
翌21日、「イスラエル・パレスチナ問題の解決へ向けて」と題した超教派会議に参加した、地元イスラエルのユダヤ教ラビ・レウベン・ハスキン氏はスピーチの中で、「神は高い神殿の上からではなく、藪(やぶ)の中からモーセに現れた。他者を理解するためには、われわれも神のように謙虚でなければならない」と述べた。
また、米国から参加のイスラム教指導者シャファヤト・モハメド氏は、「同じ父から生まれたユダヤ教・キリスト教・イスラム教が、兄弟として一つになれないわけがない。ヨセフをエジプトに導いた神は、彼の家族をもエジプトに導き再びカナンの地に帰された。神がこのように、共に住むことを認めておられるのだから、われわれは共に住むことができるはずだ。また三大宗教が待ち望んでいるのは、結局同じメシヤなのだ」と宗教家の団結を訴えた。
21日夜、国際会議の参加者に加え、宗教青年奉仕団(RYS)のメンバーと地元イスラエルの平和大使ら、総勢200人以上が集い、MEPI活動10周年記念バンケットが開かれた。三大宗教からの代表者による平和のための祈祷で始まり、途中RYS参加者からイスラエルでの活動報告もあった。
RYSは14カ国から約50人の青年が集い、地元のヘブライ大学からも8人が参加。三大宗教の聖地訪問や各宗教指導者との質疑応答を通じ、それぞれの宗教について理解を深めた。また、東エルサレムのアラブ地区で奉仕活動を行ったり、アラブ人大学生との交流を図った。参加した青年の代表者が感想を述べ、未来の中東平和に対する思いを語ると、会場に大きな拍手が起こった。
バンケット後、会議の参加者で地元イスラエルのバリラン大学教授モルデハイ・ケダル氏は「国と国、政治家と政治家が話し合う前に、このような宗教を含んだ文化的要素を語り合う場は、平和の構築に向けて必要不可欠である」と述べ、これからのMEPIの活動に期待を寄せた。







