「高句麗の夢」追う韓国

統一国家実現し勢力均衡へ

 米中貿易戦争が「米中新冷戦」の様相を呈してきているが、その中で揺れているのが韓国である。新東亜(12月号)に「朝貢秩序復活を夢見る中国…韓国は四面受敵」の記事が掲載された。書いたのは現役外交官である駐フランクフルト総領事の白範欽(ペクボムム)氏だ。

 中国の王朝興亡史をなぞりながら、常にその影響を受けて盛衰を繰り返した朝鮮半島に興った国々を俯瞰(ふかん)しつつ、今後韓国はどうしたらいいかを探っている。

 白氏は「東アジア秩序が揺れる時、韓半島は常に台風の目の中に入った」として、その理由を「韓半島が地政学的にベトナム、台湾とともに大陸勢力と海洋勢力の境界線上に位置しているためだ」と分析した。いわゆる地政学的宿命である。

 その宿命が大きく動き出すきっかけとなったのが2017年10月の第19回中国共産党大会だった。ここで習近平国家主席は「中華の夢」追求をぶち上げたのだ。中国は「30年代には米国を抜いて世界1位経済大国になるものとみられる」ことから、今後韓国はどちらの引力圏にいるべきかを悩むことになった。

 ここで白氏は歴史の前例を出しながら、「高句麗が隋の崛起(くっき)に対応して、突厥(とっけつ)と百済、倭を適切に活用したように、われわれも近隣強大国の対外政策を正確に理解して活用しなければならない」と強調する。

 さらに白氏の主張で目を引くのは「中国がさらに浮上しようとする前に、少なくとも南北経済共同体を樹立しなければならない」としていることだ。統一された南北ならば、かつて隋の猛攻に耐えた高句麗になり得るという見立てだ。

 現在の韓国文在寅政権が、対日関係をそっちのけにし米国の警告を無視してでも南北関係構築に邁進(まいしん)している理由がこの辺にありそうである。

 「われわれが生きる道は独自的世界観とともに外部侵攻を防御する軍事力と経済力を確保する」ことだとし、そのためには「内部を統合するのだ」という。韓国は現在、保革に分断され、貧富二極化し、社会はバラバラになっている。文政権が進める「積弊清算」も彼らなりの国家統合への避けられぬプロセスというのだろう。

 韓国人には南北が一つになれば、高句麗のような中原の国に対抗し得る統一国家ができるという“想い”がある。その実現の可否は別にして、「中華の夢」ならぬ「高句麗の夢」追求が今日の韓国にあるという理解はしておくべきだろう。

 編集委員 岩崎 哲