「赤化統一」を招く恐れ
保守の壊滅におびえる
先の大統領選の結果、韓国では「保守の壊滅は避けられない」と言われている。ハンナラ党、セヌリ党といった“親米保守”の流れをくむ自由韓国党の洪準杓(ホンジュンピョ)代表が24%を得票したとはいえ、分裂した保守がもう一度、大統領を生み出して行く力はないのではないかとの危惧が広がっているのだ。
その憂いを強くしているのが「月刊朝鮮」編集長の文甲植(ムンカプシク)氏だ。同誌7月号の「編集長の手紙」で「大韓民国はついに“万景峰号”に集団乗船するのだろうか」の一文を書いている。
文編集長は言う。
「5000年間、さまざまな強大国に踏みにじられ、文化財を奪われ、民草の命をささげ、国を奪われてきた。その過程で権威は崩れ、礼儀と道徳は消えてしまった。『自分さえよければいい』という個人主義が蔓延(まんえん)する。韓国が発展したとはいうものの、それを示す数値の隙間には、そのような意識が相変わらず息をしている。すなわちまだ精神的・道徳的には開発途上国なのだ」
「そのような国を、とりあえず暮らせるようにさせたのが建国の父・李承晩(イスンマン)であり、近代化の国父・朴正煕(パクチョンヒ)であり、全斗煥(チョンドファン)、盧泰愚(ノテウ)までの約40年間の奮闘であった」
文氏がこう強調するのは、左派政権の誕生を待つまでもなく、彼らの功績を否定し、建国も近代化も韓国が正統に歩むべき道ではなかったとして、“歴史を塗り変えよう”とする勢力の試みが執拗(しつよう)に続けられてきたからだ。左派政権が再び立って、いよいよ「韓国保守」は「滅亡」の文字を行く先に認めることになった。
文編集長の心配は、親北左派政府が「韓米同盟を解体」し、北朝鮮による「赤化統一」を招き入れるのではないかというものだ。極端な話ではない。
「自らを守る能力がないわれわれは世界最強国の米国の保護がないならば、北朝鮮でなければ日本、中国、ロシアのうちの一つに必ず食われてしまう運命だ」
米国という存在がなければ、赤化統一されるか、朝貢国に成り下がるか、植民地のようになるしかない。だから韓米同盟を死守して行かなければならないと文氏は強調しているのだ。
ところが韓米同盟は必ずしも盤石ではない。北朝鮮が国連安保理決議に反してミサイル発射を繰り返している中で、在韓米軍へのサード(高高度防衛ミサイル)の配備が「市民団体」という左派暴力集団の妨害はもとより、左派政府の意図的時間稼ぎによって遅らされている。
もし「韓米同盟の解体につながるならば、『アチソン・ライン』が韓国動乱を呼び起こしたように、われわれの運命を決定する最後の戦争を覚悟しなければならない」とし、それは「韓国の敗北で帰結されるだろう」と文氏は警鐘を鳴らす。
赤化統一されれば、どのような運命が待ち構えているのだろうか。歴史の教訓はベトナムを見れば明らかなように、国軍や警察、保守派が殺された後、南の左派も「粛清」されることを教えている。何しろ、北朝鮮は「2200万国民を犠牲にしても、300万党員だけを生かしておけばいい」という決心の下、いくら国際社会から非難されようが、それに耐え得る生存方法を決心しているのだ。
その時になって「北を慕ってきた彼ら(南の左派)は間に合わない後悔をすることになる」と予測する。
そのような運命が待ち構えているのなら、どうして韓国の保守派は結集して巻き返しを図らないのだろうか。「北のミサイルが落ちる瞬間にも、内部分裂でまともな抵抗さえできないだろう」と文氏は予測する。歴史上何度もあった同じような経験は、危機の時ごとに必ず持ち出されるが、それが生かされたためしがない。
現在の韓国が、「この世の地獄を地上の楽園と信じて万景峰号に乗り込もうとする北送僑民(海外在住韓国人)と違わない」と文氏には映る。左派学生運動出身者で占められる現政権には到底届かない警鐘だ。いやむしろ彼らの意図通りに進んでいるのかもしれない。
編集委員 岩崎 哲