慶州地方で起きた地震

北核実験による誘発疑う

 9月中旬、韓国慶州地方でマグニチュード5・8の地震が発生した。韓国では「観測史上最大規模だった」と言う。遺跡や歴史文化財の多い同地ではこれらにも被害が及んだ。地震については「安全地帯」と思われていたことから、備えがほとんどなかったためだ。日本では早期警報が10秒以内で送られてくるのに対して、韓国ではこの時、緊急避難メッセージが送られてきたのは本震から8分、余震から15分過ぎてからだった。

 隣国の日本では5年前の東日本大地震、今年4月の熊本大分地震などが起き、韓国人は被害の大きさや復旧の困難さ、防災の大切さなどを見ていたはずだが、自分の身に降りかかってくるとは思っていなかったようである。

 日本は四つの大きなプレートがぶつかる境界上にあるため、地震が頻繁に発生するが、韓国は大陸プレートの内側に乗っているため、「地震の安全地帯」と信じられてきた。事実、韓半島では20世紀以降「強度5」以上の地震は4回記録されているだけである。

 ところが、ここにきて「強度4」を含めると1996年、97年、2008年と続けて地震が襲った。過去に比べて頻繁に発生している理由について、韓国では北朝鮮の地下核実験と関連付ける見方が多い。特に今年に入って2回行われた核実験が慶州地震を誘発させたのではないかと疑う報道が目立っている。

 「月刊朝鮮」(11月号)では「韓国地盤工学会」と「米地質調査局(USGS)」に地震と核実験の相関関係を聞いている。同誌の質問に対して、韓国地盤工学会の専門家は、今回の慶州地震は「東日本大地震で動いたプレートの歪(ひず)みの解消過程で発生したもの」との見方を示して、北核実験との関連性を否定した。

 北核実験は今年1月と9月に咸鏡北道吉州郡豊渓里で行われた。韓国慶州とは直線でも700~800㌔㍍離れている地点だ。工学会専門家は、「誘導地震活動は一般的に長距離過ぎて影響を与えることはできない」と関連性を否定した。

 さらに米地質調査局の専門家も、「5回目の核実験は強度5の人工地震で、これが地下の一部にストレスを与えただろうが、推測ではそれも半径数㌔㍍の範囲にとどまる」と語り、記者の期待する答えは与えなかった。

 同誌はよほど、北の核実験と韓国地震を関連付けたいとみえる。その背景には、やはり韓国は「地震の安全地帯」だという思い込みがあり、地震の理由を北核実験というはっきりしたものにしておきたい心理が働いているのだろう。

 ところが、米地質調査局はこの期待をも打ち砕いた。「20世紀と21世紀、韓半島の地震発生記録を見れば、強度4と5規模の地震が続いた。この事実だけを見ても、これからさらに強い地震が韓半島に被害を与えるだろう」との見通しを示したのだ。

 こうした専門家の見解は、しかし、同誌記者を完全には説得できなかったようだ。記事の後書きには、こうあった。

 「匿名を要求したある地質専門家は、『北核と地震には相関関係があると主張したくても、名前を明かして行った場合、後の影響が大き過ぎるために、簡単には答えられない。韓半島は国土が小さく、南北の地殻がいくらでも相互影響を与えるとみられるが、オープンには語れないという現実を直視しなければならない」

 もし北の核実験が原因で地震が発生するなら、実験を止めれば地震もなくなる、という論理になる。つまり、地震は交渉でいくらでも防げることになるのだ。それを核実験とは関連性はなく、自然に発生するとなれば、人の手には負えなくなる。

 地震を防ぐ方法がなく、予防も難しいとなると、韓国は日本のように耐震化を進め、老朽化した建物の建て替えなどが必要になってくる。慶州地震が韓国社会に与えた影響は、日本で見ている以上に深刻なものがありそうで、これからメディアの関心も高まっていくことになろう。

 編集委員 岩崎 哲