来年北朝鮮に事変の可能性、「ボイラー論理」で分析
吸収統一準備の主張
今年、韓国の朴槿恵(パククネ)大統領は「南北統一」に取り組む手始めの年と位置付けていた。新年の記者会見で「統一大当たり」論をぶち上げ、3月には訪問先の独ドレスデンで「統一ドクトリン」を発表したことに、その意気込みが表れていた。
ところが、4月にセウォル号沈没事故が起こり躓(つまず)く。政府の対応が批判され、その後の内閣人事の失敗、「不通」といわれる意思疎通が足りない朴大統領の政治スタイルが反発を受けて、国会は重要法案を一つも通すことができず、内政課題が山積するという状況になって、「統一」にまで手が回らずに、今年も終わりを迎えそうなのだ。
だが、「統一は突然やって来る」とも言われ、北朝鮮がいつどうなるかも分からず、とりあえず準備だけはしておかねば、という声だけが聞こえてくる。
しかし、肝心の国民の統一意識は非常に希薄だ。特に若年層にその傾向が強く、慶北大学の学生に南北統一賛否のアンケートを行ったところ、42・7%が統一に「反対」した。さらに、鮮文大学でも同様の調査が行われ、やはり33・3%が反対するという、似たような結果が出た。
こうした若年層の統一意識の低さは政府の統一政策にも影響を与えることになる。今後、彼らが社会の中核年齢となっていくからだ。莫大(ばくだい)な統一費用負担、「統一税」などの導入に応じるとは思われない。
「月刊朝鮮」(12月号)が書評欄で「2015年、金正恩(キムジョンウン)急変爆発するか」(金★<キムジン>著)著)を取り上げた。著者は中央日報論説委員で、「現代史、北朝鮮、統一、保守、政治改革」などを担当している。
金氏はこの本で、来年「金正恩体制下で急速に変化が避けられなくなる理由と、吸収統一を準備しなければならない韓国の姿勢」について詳述している。
北朝鮮の変化とは何か。著者独自の「ボイラー論理」があるという。「韓半島に緊張が発生してボイラーの圧力が上がると、ソウルは変化がないのに、平壌が炸裂してしまう」というものだ。
具体例として、1993年、金日成(キムイルソン)は核不拡散条約からの脱退を宣言し、核挑発を試みた後、米国の攻勢で追い込まれ、翌年心臓発作で死亡した。2010年、金正日(キムジョンイル)は天安艦爆沈、延坪島砲撃などで南を挑発し、国際社会で孤立しながら、翌年心臓発作で死亡した。いずれも、自ら作り出した緊張が自身の身体に帰ってきたという格好だ。
金正恩はどうか。2013年、ナンバー2の張成沢(チャンソンテク)を処刑し、その系列の粛清を行った。張処刑が13年12月で、粛清が行われたのが14年だから、次の年の15年が「注目」だというわけだ。
金正恩の「炸裂」はどういう形で現れるだろうか。金氏は二つのシナリオを想定する。「緊急性疾患での急死」と「側近による暗殺」だ。「人民による蜂起は事実上不可能」と見る。
統一パターンについて金氏は、「ベトナムの『武力的吸収統一』、ドイツの『平和的吸収統一』、イエメンの『平和的対等統一』」で、「正解はドイツ式統一」だとの考えを示す。
南北統一によって、北住民の困窮、人権弾圧、核問題、韓国内での「南南葛藤」を解決することができると金氏は述べる。部分的には朴大統領の「統一大当たり」論に近い見方である。
現実がこのような“予言”の通りに進行するとは限らないが、もし、来年、北に事変があるとして、韓国に準備ができているかと問えば、到底、来るべき事態には耐えられないと言わざるを得ないだろう。金氏はだから、「吸収統一に備えよ」と主張している。
韓国政府も国民の意識も統一準備には程遠いが、北が持ちそうにない、という現実はもうすぐそこまで来ているのかもしれない。
★=王へんに進
編集委員 岩崎 哲