米国に根を張る北朝鮮、在米韓国社会の従北勢力
「慰安婦像」から「反韓」へ
韓国の朴槿恵(パククネ)大統領が9月、国連総会出席のためニューヨークを訪れると、ある種の“大歓迎”を受けた。「だれがセウォル号を沈めたのか」「沈没は政府が指示して国家情報院が脚本を書いた」「死んだ子供は戻ってこない」というシュプレヒコールが朴大統領を包んだのだ。在米韓国人団体の仕業である。
いま、米国では韓国人コミュニティーが力を付けてきている。地方議員を動かして、「従軍慰安婦像」を建てさせるほどになっている。だが、彼ら在米韓国人がみな祖国への愛に溢(あふ)れているわけではない。朴大統領を罵倒(ばとう)するような「反韓」グループが育ってきており、その背後には「親北」活動家と団体が存在しているというのだ。
「月刊朝鮮」(12月号)がその実態を紹介している。語るのは「自由民主研究米国代表のローレンス・ペック博士」だ。ユダヤ系米国人のペック博士は10月に韓国を訪問して、「米国内の従北勢力の活動実態」について講演した。
同博士が米国内の最も代表的な親北団体として名指ししたのは、ロサンゼルスで盧吉男氏が率いる親北ウェブサイト「民族通信」と、ニューヨークに拠点を置く尹ギルサン氏が率いる「在米同胞全国連合会」の二つだ。
盧氏は「平壌を60回以上も訪問し、(2014年4月に)北朝鮮から国際金日成賞を受賞」している。民族通信の創刊15周年には、北朝鮮から称賛のメッセージを受けた。
尹氏の在米同胞全国連合会も、ペック博士は「米国で北朝鮮の領事館の役割をしている」と指摘する。1998年から訪朝を希望する在米韓国人の訪朝をサポートしている。
さらに「ノドゥッドル」という団体は、在米韓国人の子弟を対象にし、「訪朝体験プログラム」を推進し、彼らに「親北意識を植え付けている」とペック博士は警告する。
韓国訪問も行っているのだが、韓国軍が海軍基地を建設しようとして反対運動が起こっている済州島の「江汀村のような所にだけ連れて」行ったり、「脱北者の子供たちに英語を教えたり」しており、「反韓親北」意識を植え付けているのだ。
そして、米国内の反韓団体は在米韓国人によるものだけとは限らない。米国人が主導する団体もあるのだ。代表的なものとして、「アンサー・コアリション(AC)のプレストン・ウッド氏とインターナショナルアクションセンター(IAC)のジョン・パーカー氏」を挙げた。両氏とも今年の「民族通信」の「平和正義賞」を受賞している。
しかも、この二つの組織は、「社会主義労働党、労働者の世界党のようなトロツキー主義に追従するマルクス主義政党の前衛組織」だとペック博士はいう。
深刻なのは、「彼らが在米韓国人社会の主流に入ってきていることだ」とペック氏は憂慮を示す。わずかな核心的な親北人物によって、ごく普通の在米韓国人団体やコミュニティーが誘導される。そして「米国の有名人が知らずに、親北勢力に利用され始めている」というのだ。
その代表的な例が、「マイク・ホンダ下院議員」だ。日系人のホンダ議員は「慰安婦」問題を取り上げるなど、韓国系、中国系団体の中で過激な反日行動を取っている。「慰安婦」問題では、多分に北朝鮮の対日人道攻勢に乗せられているきらいさえある。
韓国問題では、「平和協定の締結を要求する韓国戦終結キャンペーンイベントで講演」している。休戦協定を平和協定にしようというのは北朝鮮の主張である。
ほかにデニス・クシニッチ元下院議員は「内乱陰謀罪」で起訴されている統合進歩党の李石基議員を擁護する公開書簡を発表している。
こうして、「親北」勢力は在米韓国人社会に浸透するだけでなく、その基盤を使って、米国の政界にまで影響力を行使するまでになっているのだ。ペック博士の警告を韓国社会がどう聞くのか、日本でも注目する必要がある。
編集委員 岩崎 哲