準備されていた“内乱陰謀”-「月刊朝鮮」より

北偵察総局が直派スパイに指示

 「李石基内乱陰謀事件」を契機に、彼の「革命組織」(RO)の秘密会合でやり取りされた破壊工作が具体化した場合のシミュレーションが行われている。それは、どれほど韓国社会がテロ破壊工作に脆弱だったかを思い知らせる内容であり、国民への強い警告となっている。

 月刊朝鮮(10月号)ではRO組織員が石油基地、ガスタンク、電力施設、ネットインフラ等の国家基盤施設への破壊工作を実施した場合の被害を予想している。

 電力が止まり、インターネット施設が破壊されれば、政府の目と耳は失われたも同然となり、大混乱を引き起こす。北朝鮮の目的は混乱を引き起こしたうえで、社会攪乱状態にすることだ。

 同誌によれば、専門家たちは「RO単独作戦は不可能で、北朝鮮軍の挑発とともに、後方攪乱作戦を行う可能性が大きい」と見ている。韓国内でROが破壊工作を行い、同時に北朝鮮軍が挑発攻撃を行ってくるという指摘だ。

 さらに柳東烈治安政策研究所専任研究官は、「北朝鮮特殊工作員の後方テロと結合して、武装暴動に連結することができる」との見方を示す。つまり、ROが破壊活動を行い、同時に南で「北朝鮮特殊工作員」がテロを仕掛ける、ということだ。

 テロを行うということは、武装しているわけで、工作員は武器を備えていることを意味している。同誌では北から搬入したケースと、自家調達、すなわち私製爆弾や改造銃が用意されている可能性を指摘する。

 だが、現代の韓国で北の工作員が武器と共に潜伏し、社会生活を営んでいるというのは想像しにくい。これについて柳研究官は、「北朝鮮はすでにかなり以前から、後方攪乱のための情報を直派(北から直接派遣した)スパイと韓国内地下党(南の非合法朝鮮労働党)を通じて、着実に収集・更新して来た」と分析しており、「直派スパイ」「地下党員」が準備し得ることを強調する。

 「地下党員」は「従北勢力」の一部であり核心であって、別稿で述べたような「親北」ではあり得ないし、まして「温北」でもない。

 同誌別稿の「北朝鮮対南工作部署」によると、北の対南工作機関には「国防委員会傘下の総参謀部所属『偵察総局』」と「労働党所属の統一戦線部」「内閣傘下の『225局』」などがある。

 この中で、225局は「指導核心スパイと新世代革命工作員養成はもちろん、地下党工作業務を受け持っている」という。過去に韓国で摘発された「民族民主革命党事件(1999年9月)」「一心会事件(2006年10月)」「旺載山事件(2011年8月)」などの深刻な内乱陰謀事件に関与していた可能性が高い、という。

 3月に突然、停戦協定の無効を主張した金英徹偵察総局長は、哨戒艇「天安」爆沈事件などの「対南強硬姿勢」を取る人物だという。それが最近、「黄海と日本海で潜水艇と半潜水艇、工作母船による浸透訓練を強化している。特に長距離移動訓練・浸透帰還訓練を反復して行っている」と専門家は明らかにした。

 偵察総局の守備範囲は、「サイバーテロ」「GPS攪乱作戦」にも及んでおり、これらの工作で韓国社会が大混乱に陥ったことは記憶に新しい。

 さらに「韓国政治にも深々と介入している」という。昨年の総選挙(4月)と大統領選挙(12月)を前にして、偵察総局は、「韓国政府に不満があったり、北朝鮮に友好的な国会議員、市民団体幹部、留学生、韓国人団体内の体制不満分子などを抱き込め」と工作員に数回指示を出していたと「安保当局者」は同誌に語っている。

 李石基事件を契機に、北朝鮮の対南工作が暴かれ、南の「従北勢力」の実態が明らかになりつつあるものの、事実を前にしながらも、容易に当局の発表を受け入れない韓国大衆の「親北」姿勢も改まらないでいる。

編集委員 岩崎 哲