新首相に注目する韓国、慰安婦合意反故に腹立ち
日本で岸田文雄政権が誕生したことに韓国は強い関心を抱いている。戦後最悪と言われる両国関係に改善の道が開かれるかどうか、新しい指導者に注目しているのだ。
おおむね韓国メディアは「安倍・菅政権を継承する」とみているが、彼が自民党の中でも比較的穏健な政策を志向する宏池会(岸田派)に属するという点で、「極右」と規定した安倍政権よりもなにがしかの期待が持てるのではないか、といった、一方的な空想をたくましくしている面も否めない。
月刊中央(11月号)は近藤大介元週刊現代編集長の「岸田新首相と韓日関係の行方」を載せて、岸田氏の政治歴や人となりを紹介した。祖父正記、父文武に続く「広島の政治名門の家柄」で、親族に宮沢喜一元首相もいる政治家3世であること。東大受験を3度失敗して早大に進学したこと。「温厚だが頼りない」という印象を持たれていることなどが紹介されている。
その中で、岸田氏が強いこだわりを持って成し遂げたこととして、2016年の伊勢志摩サミットで来日したオバマ米大統領(当時)を広島に招いたエピソードを挙げた。近藤氏は、「原爆加害国の米軍最高司令官(大統領)が被爆地の広島を訪ねたことは前代未聞」のことで、岸田外相(当時)の“強い”面を伝えたのだ。
さらに、その前年の15年慰安婦日韓合意も岸田氏の「成果」として挙げた。しかし、これは18年、文在寅政権によって事実上反故(ほご)にされてしまう。岸田氏が著書「岸田ビジョン」の中で1カ所だけ「腹が立った」こととして挙げているのが、まさにこの件である。
近藤氏は、岸田氏が「日韓両国間の国際的合意を国内事情のために翻意するならば信頼関係は維持されない。(略)韓国がとっている態度には率直に腹が立つ」と書いていることを伝える。
“穏和”な岸田氏をして、これほど怒らせているのが合意反故ということだ。これを日本人の原稿に語らせたところに意味がある。韓国人記者が書いたなら、即座に「土着倭寇」のレッテルが貼られて、意味が薄められただろう。
この原稿は衆院選前に書かれた。議席数を減らしたとはいえ、それでも「絶対安定多数」を得て強度を増した岸田政権を韓国はどう見るのだろうか。今度は韓国人記者の分析を読みたいものだ。
編集委員 岩崎 哲





