「韓国式」を厳しく取り締まる北朝鮮 

反体制活動を警戒する金正恩総書記

 現在、北朝鮮では韓国風の言葉遣い、ヘアスタイル、ファッションなどが厳しい取り締まりに遭っている。何か金正恩(キムジョンウン)総書記の逆鱗(げきりん)に触れたらしい。やり玉に挙がったのが「韓国風のガーデンウェディング」だ。月刊朝鮮(8月号)が報じた。

 金総書記はこの結婚式を契機に、「帝国主義の思想文化的浸透策動を叩(たた)き潰(つぶ)し、われわれの社会主義文化と生活様式を徹底的に守らねばならない」と指示を出した。

 そして、これらを行った者は「腐って堕落した資本主義思想文化を引き込んだ革命の敵であり、無慈悲に踏み潰すべき撲滅対象」だとして、「猛烈に根こそぎ厳しく治めなければならない」と激烈な命令を下したのだ。

 さらに、結婚式を行った当人だけでなく、家族や親族、そして、これが明るみに出た切っ掛けである「動画」の製作者までが「反党・反国家的犯罪者」と規定され、「死ぬほどの罪」で裁かれるという。

 昨年末には韓国式言葉遣いをすれば懲役刑に処すなどとした「反動思想文化排撃法」までが制定された。具体的には夫(ヨボ)を「兄さん(オッパ)」と呼んではならず、「ボーイフレンド」は「男同務(ナムドンム)」と呼べ、路上でハグをするな、など細かく厳しく規定する。

 金総書記がこれほど怒り、厳しい指示を出したのには理由がある。北朝鮮で「反体制活動を展開する革命組織の動き」があるからだ。そのために綱紀粛正、体制引き締めに出たという分析で、これも月刊朝鮮(同)が報じている。

 同誌によると、最近「独裁打倒」「民主朝鮮万歳」を訴える「SDカード」が北朝鮮内に流布しており、金総書記は警戒を強めているというのである。カードには「金正恩を追い出して人間らしく生きることができる新しい社会を打ち立てよう」とのメッセージがあり、背景音楽には「光復(解放)のその日が来ればまた会おう」という北朝鮮の歌謡が流れるといった具合だ。

 若者を中心に広がっている韓国式言葉遣いやスタイルは、体制の緩み、世代の違いだけでは説明できない。金正恩独裁体制への拒否感が表面に出てきているということだ。韓国が誇るK-POPやKカルチャーが、文在寅(ムンジェイン)政権が支援を惜しまぬ北朝鮮の体制を揺るがし、反体制革命組織の活動まで助けているとは、とんだ皮肉である。

 編集委員 岩崎 哲