反韓世論が膨張した日本
韓国反日圧力の陥穽
米バージニア州議会では、同州の教科書で「日本海」に韓国等が主張する「東海」を併記する案が2月6日、可決した。同州に居住する韓国系住民の「東海併記運動」が「地理学的・歴史的に広く定着し、国際的に確立された唯一の名称=日本海」を押し切ることになった。
韓国の朴槿恵(パククネ)大統領は日本の「歴史認識」等を批判する“告げ口外交”を続けているが、米国でこうした“成功”事例が出てくることで、それが奏功したと判断するだろう。その結果、このような対日圧力外交に自信を深め、米国などを巻き込んだ「国際的な圧力」をさらにかけてくる可能性がある。
安倍晋三首相は一貫して「扉は開けてある」として日韓首脳会談の開催を呼び掛けているが、韓国側に応じる気配は全くない。話し合いをせずに、いわば外堀を埋めつつ、味方を増やす方式で日本批判包囲網の構築に勤(いそ)しんでいるのだ。
ただ、韓国ではこうした朴大統領の“頑なな”姿勢に疑問が出されているのも事実だ。世論調査でも「日本との首脳会談」を支持する意見は「反対」を上回っており、首脳会談を促す論調も韓国メディアから出てきている。
韓国を代表する言論人・趙甲済(チョカプチェ)氏が主宰するネットメディア「趙甲済ドットコム」では、首脳会談を促すだけでなく、より踏み込んで「安倍首相を追い詰めてはならない」と朴大統領に呼び掛けている。「朴槿恵大統領に一つの惜しい点」という記事がそれだ。
米国は年末の安倍首相の靖国神社参拝に対して「失望した」とのコメントを発表した。韓国側が対日圧力外交に自信をつけた転換点だと言える。しかし、これをもって米国が韓国側に立ったかといえば、そうではない。日米同盟関係はそれで揺らぐほど脆弱(ぜいじゃく)ではないと記事では分析している。加えて、「米国の雰囲気は一瞬で変わることもありうることを韓国政府の外交ラインは認識しておくべきだ」と警告する。
韓国が強い懸念を示す「集団的自衛権行使」は従来から米国が日本に求めてきたものだから、米国のこれに対する支持は不変だ。さらに、米韓同盟の立場から、韓国にも容認を迫ってくるのは避けられない。この点で3国関係がギクシャクすれば、東アジアの安保に隙をつくる。韓国政府は決断を迫られるわけだ。
さらに、安倍首相叩きを続けたところで、変化を促せていない点に注目している。記事では安倍首相には「日本国内の反韓世論に力づけられていることが大きい」と分析する。つまり、安倍首相が「韓国側に譲歩する姿勢をとれば、日韓関係は改善されるだろうが、日本国内での政治生命が危険になる、という逆説的状況に陥る」というのだ。
そして、安倍首相に「そう『させる』『せざるをえない』日本国内の反韓世論の急激な形成は、わが方に相当部分その原因があると見なければならない」と分析している。
「結局、現在のような対日圧力は、安倍政権をして歴史認識を変えさせるのではなく、日本内の反韓世論だけを刺激し、むしろ安倍政権により一層強硬な対韓態度を堅持させるという悪循環に陥っていると見られる」と述べる。
李明博(イミョンバク)大統領の竹島上陸や天皇謝罪要求は、「実益もなく、寝ていた日本人の戦闘意思だけを高めたという結果を産んだ。朴大統領も就任後、外交先の順番でいたずらに日本を刺激しただけだ」、と韓国政府側の“落ち度”も指摘する。
結論的に記事は「歴史認識と外交安保は徹底的に分離対応する」という「良い出口」に素直に向かうべきだと韓国政府に促す。この指摘を朴槿恵大統領はどう聞くか、国益よりも感情を優先している現在の状況では、その聞く耳さえ塞がっているように見えるが……。
編集委員 岩崎 哲