文在寅政権の「1000日」
「明確な成果は皆無」と酷評
韓国で文在寅政権が誕生して「1000日」が経過した。「かつて経験したことのない国をつくる」と国民に約束してから、ある意味本当に「経験したことがない」ことばかりが起こっている。
月刊朝鮮(3月号)が「文在寅執権『1000日の記録』」の記事を載せた。文の公約とこれまでの実績を細かく見た、いわば成績表のようなものだ。メディアの使命が政権の監視だとすれば、意味のある記事と言える。
ここで主に挙げているのは、「機務司令部の内乱陰謀扇動」「所得主導経済成長政策」「反原発と原発セールスの自家撞着(どうちゃく)」「北朝鮮の非核化と核武装完了」「選挙介入、世論操作」などだ。
内乱陰謀だと騒いだものの、結局、無罪に終わった。つまり、機務司令部を探ったが、何も出て来ず、何もなかったのである。経済政策は失敗している。失業は増え、成長率は落ちている。国内で原発をなくすと言っていながら、文自らが欧州や中東で原発セールスの先頭に立つ。
中でも「金正恩のスポークスマン」と米メディアに揶揄(やゆ)されるほど、北朝鮮に核武装の意図はない、国連経済制裁を緩和しろ、と説き回ったのに、その間、北朝鮮は核開発、ミサイル実験を繰り返し、「核保有国」を宣言するに至った。文は北の欺瞞(ぎまん)を見抜けなかったのか、分かっていて道化役を演じたのか。
露骨な選挙介入に「民主政権」の名が呆(あき)れる。「民主」といい、果たして韓国は世界と同じ文法を使っているのか、確認が必要だ。
この記事を総選挙の前に出す同誌の狙いは明確である。文政権がどれほど国民を騙(だま)してきたかを明確にし、選挙で審判を下す材料にするためだ。
特に文政権が目指す「国家像」が何かを想起させたことは評価できる。端的に言って文は歴史の改竄(かいざん)を行おうとしている。2019年には「臨時政府の法統を継承した大韓民国建国100周年」などと発言したが、韓国建国は1948年で、文の話は史実に合わない。
ところが、左派政権は韓国の建国を19年、つまり中国上海で宣言された臨時政府にあると規定しようとしている。そうすれば、10年に日本に併合されたものの、臨時政府を立てて「交戦状態」にあったと主張できるからで、交戦国となれば、戦後賠償を受けられるだけでなく、北朝鮮とも歴史を合わせることができるからだ。ところが、当時この臨時政府を承認する国は一国もなく、だから終戦後、講和条約にも加わることができなかった。
話を戻せば、同誌は「このように文大統領の1000日はどれ一つ明確な成果を出したとは言えない」と断定し、「一度も経験したことのない国をつくる」という約束だけは守った、と皮肉で記事を締めくくっている。残る任期「800日」がどうなるかは総選挙の結果次第となる。(敬称略)
編集委員 岩崎 哲





