トルコ、きょう92回目の建国記念日

G20議長国として責任遂行

トルコ共和国特命全権大使 アフメト・ビュレント・メリチ氏

 トルコ共和国はきょう、92回目の建国記念日(ナショナルデー)を迎え、国内外で盛大な祝賀行事が行われる。ヨーロッパ、アジア、アフリカの3大陸結節点に位置するトルコは、これまで東洋文明と西洋文明がシルクロードを通じて行き来した地政学上きわめて重要な「東西の十字路」になってきた。きょうの建国記念日を機に、深化する日本とトルコの関係を振り返った。
(企画・制作=世界日報社企画開発部)
(資料提供=駐日トルコ共和国大使館)

日本・トルコ 平和と発展のパートナー

ビジョン2023に日本の積極参加を

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 トルコ共和国92周年記念日にあたり、世界日報の読者の皆様にお話しできることは、私にとって大きな喜びであります。この機会をお借りして、私は、日本の友人に対しては私の心からなるご挨拶を、また、大きくなりつつある日本におけるトルコ人コミュニティーの皆様には私からの祝辞を贈りたいと思います。

 トルコの国民は、ムスタファ・ケマル・アタテュルクの指導の下、第1次世界大戦後の外国の占領を終わらせるための戦いに勝利し、1923年10月29日に共和国の成立を宣言しました。それから90年以上経って、トルコは、世俗主義の民主国家、法の支配する社会からなる国家、欧州・大西洋コミュニティーの活動的な一員、活力ある民間部門や、若く、高度の教育を受けた国民によって支えられるダイナミックな自由市場など、建国の父アタテュルクが掲げた理想とビジョンの具現体として存在しています。

 安定した政府、そして過去10年間の5%の年平均成長率のお陰で、トルコは著しく発展しました。トルコは目下、世界で17番目の経済大国として、20カ国・地域(G20)の議長国を務めています。トルコは、この責任ある立場で、G20のこれまでの業績の継続に力を入れ、さらにグローバル経済におけるG20の優先事項に沿って重要な仕事を遂行しました。私たちは、来る11月15、16日にアンタルヤで行われるG20首脳会合の折に、安倍晋三首相をお迎えできることを光栄に思います。

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 トルコの外交政策は、アタテュルクによって提唱された「祖国に平和、世界に平和」という原則に基づいています。トルコが、グローバルな変化の影響が最も著しい地域において、ダイナミックな外交政策を追求しているのは、前述のような考え方からであります。この役目は、最近の地域的不安定性の急激な高まりに直面して、特に重要となっています。そういう所では、歴史の政治的利用や、過激主義、そして暴力などが、困ったことに、増加しているのであります。

 以上のような脈絡を全般的に眺めますと、わが国の日本との関係は、重要な位置を占めることになります。昨年、私たちは、国交樹立90周年記念を祝ったところです。しかし、二国間関係の起源は19世紀に遡ります。皮肉なことに、1890年に和歌山県串本町沖合で起きた台風によるオスマン帝国艦艇エルトゥールル号の悲劇的な沈没が、歴史的に大きな節目となったのです。今年は、エルトゥールル号の日本への航海125周年を記念する行事が催されました。それには、今年6月のトルコ海軍のG級フリゲート、ゲティスの下関、串本、そして東京港訪問が含まれます。この悲劇や、1985年のイラン・イラク戦争中、トルコ航空が日本人をテヘランから避難させたことを中心テーマに作成されたトルコ・日本合作映画「海難1890」が、今年の12月初めに公開初日を迎えます。

 今日、トルコと日本はあらゆる分野で、強く友好的な関係を享受しています。私たちは、グローバルな問題に対する似通った理想、共通の価値観、そして、同じ目的を志向するアプローチを共有しています。両国間の戦略的パートナーシップは、10月7~8日のわが国のレジェプ・タイップ・エルドアン大統領の訪日によってさらに強固なものになりました。

 トルコは、8000万人の人口、2兆㌦の国内総生産(GDP)、2万5000㌦の1人当たり国民所得、そして5000億㌦を超える総輸出量を目指している「ビジョン2023」においても、日本に参加を期待しています。

 日本の企業は、エネルギー、運輸、都市基盤整備、教育そして健康など、これらは、わが国の急速な成長戦略の一部を成すものであるのですが、そういった分野の主立ったインフラ・プロジェクトで大きな役割を担っています。

 すでに完成しているマルマライ・トンネル、現在進行中のイズミット湾横断橋、シノップ原子力発電所、トルコ・日本科学技術大学などに加えて、数々のプロジェクトが、私たちの戦略的連携関係における最も重要な目的として存在します。私たちは世界一長いつり橋になるチャナッカレ橋のような、引き続いて行われるメガプロジェクトに日本の企業の参加を期待しています。一方、経済連携協定および社会保障協定の交渉の完結は、経済・商業の分野における両国の協力に新たな一章を開くことになりましょう。

【トルコ共和国建国記念日とは】
 オスマン帝国(1299~1922年)が第1次世界大戦で敗北すると、同帝国で青年トルコ党を率いていたムスタファ・ケマル将軍(1881~1938)が1922年にスルタン制を廃止、23年10月29日に共和国建国を宣言、初代大統領に就任した(38年11月10日まで在任)。これを記念して、トルコでは10月29日を毎年建国記念日として祝っている。34年のトルコ国会では、ケマルに「アタテュルク」(トルコの父)の称号を贈った。

映画 奇跡の物語「海難1890」

国をも動かす「人を思う気持ち」

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トルコ乗組員(手前)の救援に当たる医師・田村(左、内野聖陽)と助手のハル(忽那汐里)映 画「海 難1890」か ら(2015 ErtugrulFilm Partners)

 日本・トルコ友好125周年の今年、日本、トルコの全面協力のもと、国家級プロジェクトともいえる壮大な規模で描かれた真実の物語、映画「海難1890」が12月5日(土)から丸の内TOEIほか、全国で公開される。
 1890(明治23)年9月16日、当時オスマン帝国の軍艦「エルトゥールル号」が和歌山県串本町沖で台風により座礁し、大破した。乗組員600名以上が大海原に投げ出され、犠牲者は500人以上を数えたが、地元漁民・住人たちの献身的な救助活動により、69人の乗組員の命が救われた。

 それから95年後の1985(昭和60)年3月19日、イラン・イラク戦争の真っ只中、突如イラク政府が「イラン上空 無差別攻撃」を宣言。緊張高まる中、イランのテヘランに残された日本人215人をトルコ航空機がトルコ自国民よりも優先して搬送した。

 この二つの事件は、歴史、文化、宗教の違いを超えて、人が人を思う気持ちが国をも動かした奇跡の物語だ。

 主演は、海難事故に遭遇し、懸命に乗組員を治療する医師・田村に内野聖陽。忽那(くつな)汐里(しおり)は、心に傷を負いながらも田村の助手として働くハル、そしてテヘラン脱出のため、日本大使館に掛け合う日本人学校の教師晴海の二役を演じている。ほかにも、夏川結衣、永島敏行、竹中直人、笹野高史、小澤征悦、宅間孝行ら豪華キャストが出演している。

 イスタンブールの世界遺産・トプカプ宮殿やグランド・バザールなど、撮影許可が滅多に下りない歴史的建造物での大規模ロケも行われた。時にはエキストラを併せて約1000人を使った大掛かりな撮影が2カ月も続いたという。

日本人が知らなかった、奇跡的な実話を通じ、親日的なトルコの人々の歴史的背景を教えてくれるヒューマンドラマだ。

【資料と写真は、東映(株)提供】