日本の脱退カード目前か、腐敗・汚職の横行続くUNIDO
ウィーンに本部を置く国連工業開発機関(UNIDO)の様相がさらに悪化してきた。在ウィーン国際機関日本政府代表部の北野充特命全権大使は先月、李勇事務局長と会談したが、そこで大使はUNIDOの現状に強く不満を表明し、「UNIDOが本来の使命を履行できないようだと、日本も考えざるを得ない」と述べ、脱退の意思を示唆したという。ウィーンの国連外交筋から聞いた話を紹介する。(ウィーン・小川 敏)
能力欠如、ポスト配分に不満
欧米主要国は次々脱退
加盟国の脱退はUNIDOにとってもはや珍しくない。先進諸国でUNIDOにとどまっている国の方が少数派だ。UNIDOから脱退した国は、カナダ、米国、オーストラリア、ニュージーランド、英国、フランス、オランダ、ポルトガルなどだ。それに脱退予備軍としてスペイン、ギリシャ、イタリア、ベルギーの名前が挙がっている。スペインは今回、日本と同様、脱退の意思をちらつかせている。「日本が脱退するかもしれない」というニュースは国連関係者にはショックかもしれないが、「日本の脱退は少々遅過ぎる」という声がささやかれるのも事実だ。
ウィーンの国連外交筋は「日本がUNIDOから脱退の可能性を示唆したのは今回が初めてだ」と強調した。事実とすれば、大変だ。
それでは、どうして日本はここにきて脱退を考えだしたのだろうか。同外交筋は「UNIDOの腐敗体質、履行能力の欠如などのほか、日本側もUNIDO内のポスト配分で不満があるようだ」という。
欧米主要国が次々と脱退を表明したが、日本は「UNIDO脱退はあり得ない」という姿勢を維持してきた。理由は明確だった。①国連機関からの脱退は日本の願いである国連安保常任理事国入りにとってマイナス②UNIDO脱退は開発途上国から強い反発が予想される―の2点があったからだ。
日本のUNIDO脱退の可能性について、在ウィーン国際機関日本政府代表部のUNIDO担当外交官は記者の電話インタビューに応え、「わが国は現在、厳しい財政状況下にある。国際機関の加盟・脱退問題はそのメリット、デメリットを慎重に分析して決定されなければならない」と説明し、UNIDOの今後の運営を注視していく意向を明らかにしている。換言すれば、日本は今すぐに脱退する考えはないが、将来の脱退をもはや完全には排除していないということだろう。
脱退国の増加でUNIDOの予算は縮小され、機関の運営はますます難しくなってきている。経費の88%は人件費と維持費だ。活動に投入できる予算は残りの12%にすぎない。換言すれば、UNIDOは生き残るために存在し、開発途上国の開発支援という本来の使命は二の次だ(日本はUNIDO最大の分担金負担国で約19%、約1299万ユーロ(約17億9000万円)。UNIDOは日本、ドイツ、中国の3カ国で支えられている)。その上、縁故主義が席巻する一方、職員の腐敗・汚職は日常茶飯事のことだ。中国エリート官僚(財政部副部長)の李勇氏が事務局長に就任した後もUNIDOの状況はあまり変わっていない。高給取りのコンサルタントは増加する一方、職員のやる気は減退してきている。
ウィーンの国連外交筋は「中国の反日活動が激化すれば、日本はUNIDOを舞台に中国へさまざまな圧力を行使してくるかもしれない」と予想している。いずれにしても、日本が脱退すれば、UNIDOの存続は難しくなり、UNIDOはニューヨークの国連開発計画(UNDP)に吸収される可能性が高まると予想される。












